年俸制の者に対する残業代の払い方
年俸制の割増賃金に関してお伺いします。年俸制で給与を支払っている従業員にも残業をした場合は残業代を支払わなくてはならないと聞いたのですが、あらかじめ残業代を含めて年俸額を定める方法はないでしょうか?
労働基準法はもっぱら労働時間の長さだけをとらえて規制する立場をとっていることから、年俸制を導入した場合でも、実際の労働時間が1週又は1日の法定労働時間を超えれば、時間外手当を支払わなければならないことになります。ただし労基法41条該当者については労働時間の規制除外なため時間外労働は生じません。
よってご質問のとおり、年俸者であっても割増残業代は支払わなければならないのは言うまでもありませんが、年俸額を大雑把に決めておいたことで、後で残業代不払いを指摘されトラブルになることは稀にあることです。
年俸者の割増賃金部分の決め方に注意を払うことは必要です。
年俸制は、会社が年俸者と約束した年俸額も仕事内容もまた予想される残業時間も個々の対象者ごとに違うわけですから、従業員個々の個別性が高い制度といえます。通常「年俸契約」というものをその者と結びます。
そこで重要なのは、年俸の内訳を明確にすることです。この場合、深夜残業や休日出勤も見込まれれば、その分も含めてよいでしょうが、やはりその時間は36協定の範囲内が望ましいでしょう。
例として、年俸額が600万、月の所定労働時間が168時間で平均残業時間が30時間のケースをあげます。
賞与は「1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金」に該当し、割増賃金の基礎となる賃金には算入しません。
まず、残業代を含まない月次給与Xを次のように割り出します。
X={(600万÷12ヶ月)÷(168H+1.25×30H)}×168H=408,759円
↑
1ヶ月の労働時間
その上で月の残業代Yを割り出します。
Y=(600万÷12ヶ月)-X=91,241円
年俸契約の内訳には、この時間と額をきちんと明記をしておくべきです。もちろん残業時間が30時間を超えた場合は、超えた時間分の割増賃金の支払が必要となります。
当社ホームページ「労務ドットコム」にもアクセスをお待ちしています。