人事評価理由を明確にする「PDRの視点」
今日から11月。お決まりの台詞ではありますが、早いもので今年もあと2ヶ月になりました。人事労務担当としては、これから本当に忙しい時期に入っていきます。2008年入社組の新卒採用のキックオフ、年末調整や冬季賞与の準備、来春に人事制度などの改定を予定する企業ではそろそろ組合への申入れなども始まっている頃ではないでしょうか。労務ドットコムblogでは、これから12月に掛けて年末調整の情報などタイムリーな情報を提供していく予定ですが、本日は冬季賞与に向け、いまからでも間に合う人事評価制度の簡単なブラッシュアップの方法をお話しましょう。
人事評価制度には様々なポイントがあります。社員に対する役割や期待の伝達と共有、目標管理における難易度と達成度の評価の問題、評価者間の甘辛調整など、そのポイントを書き始めたらキリがない程ですが、そうした人事評価制度のポイントの中でもっとも重要なものは何かと言われれば、私は「社員に対する説明責任の履行」であると返答するでしょう。いくら素晴らしい人事評価制度を整備しても、実際の評価の段階で、社員に対する具体的な事実に基づくフィードバックがなされないのでは意味はありません。評価が良い場合も、悪い場合も、なぜそのような評価になったのか。評価の対象となった事実はなにで、会社はその事実をどのように判断したのかということが、フィードバックされなければ、社員の動機付けないしは行動の改善に繋がることはありません。
そのためにはまず評価の対象となる具体的な事実を確実に抽出する必要がありますが、その際には「PDRの視点」という考え方を用いることが効果的です。「PDRの視点」はPlan、Do、Resultの頭文字を取ったもので、評価事実抽出の際の視点となります。
P:Plan(何を計画して、何に気付いて)
D:Do(どのような行動・取り組みをして)
R:Result(どのような成果が見られたのか)
管理職のみなさんから評価理由をあげてもらうと「頑張った」であるとか「よくやった」という理由を目にすることが多いのですが、これらの言葉は人事評価の理由付けにおいては完全なNGワードです。「頑張った」とか「よくやった」というのは文字通り、その評価者が主観的にそう感じた印象であって、事実ではありません。ここで明確にしなければならないの「頑張った」であるとか「よくやった」という評価の元となっている事実なのです。その評価対象事実を抽出するためには、この「PDRの視点」に基づき、「何を計画(Plan)し、どのような行動(Do)を取って、どのような成果(Result)があったのか」ということを抽出していくことが効果的です。ちなみにこのPDRはすべてそろっていることがベストではありますが、会社がその事実の価値を認める(評価する)のであれば、どれかが欠けても十分な評価理由となり得ます。例えば、上司の指示を受けて商品のパッケージデザインの変更を行ったところ、その商品の売上が1.5倍になったというような場合、行動(Do)と成果(Result)はありますが、計画(Plan)はありません。しかし、それが評価に値するのであれば、積極的に取り上げていけば良いのです。
人事評価制度の運用においては様々なノウハウがありますが、どのような評価制度を採用したとしても、その評価が事実に基づいたものであり、かつその事実と会社の判断が具体的かつ明確に社員に伝えられなければなりません。今年の冬季評価では是非この「PDRの視点」での事実の拾い出しを評価者に徹底し、より公正な人事評価を実現していただきたいと思います。
(大津章敬)
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