景気後退に伴い進められる企業の賃金調整・雇用調整
景気の急速な冷え込みに対する追加経済対策がニュース番組や新聞紙上で騒がれています。このような環境の中、厚生労働省は、「経済情勢の変動に伴う事業活動及び雇用面への影響について」という公共職業安定所によるヒアリング結果を公表しました。今日はこの結果について取り上げてみましょう。
このヒアリングは、平成20年10月初旬から中旬にかけて全国の公共職業安定所において、製造業、運輸業および卸売・小売業に属する管内の主要な中小企業(従業員数300人未満の事業所と定義)4,285社から、このところの経済情勢の変動に伴う事業活動や雇用面への影響について行ったものです。現在の業況についてヒアリングした結果では、3ヶ月前と比較した現在の業況については、全体の58.9%が「悪い」「多少悪い」と回答しています。(平成20年7月の調査では63.6%)。規模別にみると、従業員数29人以下で59.5%、30~99人以下で58.2%、100~299人以下で58.8%が「多少悪い」「悪い」と回答しており、規模の大きさに関わらず、業況が厳しいと判断していることが分かる結果となっています。
このような環境から収益が圧迫されている企業では、69.5%が「経費削減(人件費以外)」、28.5%が「商品、サービスへの価格転嫁」、18.8%が「賃金調整・雇用調整」を実施していると回答しています。これらの中でも「賃金調整・雇用調整」の実施は平成20年7月のヒアリング結果と比べると3.8ポイント増加しており、多くの企業で賃金や雇用の調整が始まったことを窺わせます。
更に賃金調整・雇用調整を実施していると回答した企業で実施されている具体的な内容を集計したのが左グラフ(画像はクリックして拡大)です。もっとも多い回答が「賃金調整(賞与切下げなど)」の55.6%となっており、今年の冬季賞与ではかなり厳しい対応をせざるを得ない企業が急増することが予想されます。これに続くのが「残業規制」の45.2%、「派遣、パート、アルバイトなどの再契約停止」の23.4%、「中途採用の削減・見直し」の21.3%となっており、景気の悪化に伴い、非正規社員を中心に雇用調整が進めら、雇用環境が一層悪化する危険性が高まっています。
関連blog記事
2008年5月10日「原油等の資源価格高騰が与える雇用環境への影響」
https://roumu.com
/archives/51323304.html
参考リンク
厚生労働省「経済情勢の変動に伴う事業活動及び雇用面への影響について-公共職業安定所によるヒアリング結果(平成20年10月実施)」
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/10/h1031-3.html
(宮武貴美)
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