中国人事管理の先を読む!第32回「評価の“見える化”」

中国人事労務 先日、クライアントの工場を訪ね、久しぶりに工場の中を見せてもらいました。真っ先に目についたのは、工場の入り口に貼ってある「技能評定表」です。総経理は「星取り表」と呼んでいました。見れば横軸に「どのような作業ができるか」の技能の名称、縦軸に労務工(ワーカー)の氏名が書かれています。それぞれの労務工の技能習熟度に応じて星を少しずつ塗りつぶしていき、最終的には多能工を育成していく仕組みのようです。なるほど、これなら誰が見ても一目瞭然ですね。この企業では、この星取り表を労務工の賃金改定に反映させているようです。このような仕組みが企業で工夫されているのを見る度に、いつも勉強させられます。

 最近は日系企業でも、特に製造現場では、このように従業員の評価を貼り出し、労務工の誰がどのような技能を持っているのかが見れば分かるように、「評価の見える化」を実施している企業が増えてきているように思います。

 日本では、従業員の評価はブラックボックスになっており、誰がどのような技能を持っているか、あえて隠すことで評価を曖昧にしてしまう企業が多いのですが、それに比べ中国では評価の「公平性」「合理性」が強烈に要求されます。

 評価というのは通常、年に1、2回(労務工では毎月評価を行うという企業もあります)程度で、その時に初めて誰がどのような評価だったかが分かります。中国では従業員が他人の給与や賞与を知っていることが一般的ですので、昇給のときに初めて誰がどのような評価だったかが分かるとすれば、従業員からは「不公平だ」「不合理だ」「彼はなぜ自分より昇給が多いのだ」という不満が起こってしまいがちです。

 しかし、この企業のように普段から評価を公開し、しかも技能の習熟度という比較的客観的な評価をいつでも見られるようにしておけば、仮に昇給や賞与に差がついたとしても従業員の納得性は高いと思います。技能的な評価をオープンにする、あるいは信賞必罰を公開することは、従業員に対して「何ができれば評価されるのか」「どのようなことをすると罰せられるのか」ということを認識させられる、非常に中国的な方法だと思います。

 「人の評価など公開すべきでない」とお考えの方がいらっしゃるとするならば、もしかするとその人は非常に日本的な価値観に縛られているのかもしれませんね。中国人従業員のモチベーションを高揚させるには、私たち日本人は、一度大きなパラダイムシフト(価値観の転換)を図ってみる必要もあるのかもしれません。


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(清原学)

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