休職者の試し出勤中の災害への労災保険適用に関する内閣の答弁書

休職者の試し出勤中の災害への労災保険適用 メンタルヘルス不全問題は、いまや多くの企業において労務管理における最大の問題の一つとなっており、その予防から休職中の対応、職場復帰まで場面に応じた様々な対策が講じられています。これらのうち、職場復帰に関しては、平成16年10月にまとめられた「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」を参考にしているケースが多くあるかと思いますが、この中に取り上げている「試し出勤」で発生した災害について労災保険の対象になるかは実務上問題となっていました。

 この点について、河野太郎衆議院議員が4月13日に「「試し出勤」についての官民格差に関する質問主意書」を内閣に対して提出しました。その中で、「「試し出勤」実施中に発生した災害は、労働者災害補償保険法の「業務災害」又は「通勤災害」に該当するか。どのような場合に該当するか、詳しく述べよ」と質問されており、「もし該当するならば、「試し出勤」実施中に発生した災害が業務災害または通勤災害として補償の対象となり得ることを、国として民間企業に周知徹底すべきではないか。例えば、「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」を改訂して、その旨より明解に記載すべきではないか」と確認をしています。

 これに対し、4月24日には内閣から衆議院に答弁書が送付されており「民間におけるいわゆる「試し出勤」中に労働者が受けた災害については、労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)第七条第一項第一号に規定する業務災害又は同項第二号に規定する通勤災害(以下「業務災害等」という。)に該当する場合がある」としたうえで、「この点については、御指摘の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」の改訂を含め、具体的な方策を講じ、民間企業に対する周知の徹底を図っていきたい」、「具体的にどのような災害が業務災害等に該当するかについては、個別の事案ごとに判断されるべきものであり、一概にお答えすることは困難であるが、「試し出勤」をしている労働者が、例えば、復帰を予定する職場において、使用者の指示に基づき当該職場の業務に関連する作業に従事するなどの状況において、当該作業に起因して災害を受けた場合や、当該作業を行うために通勤する途中で災害を受けた場合には、業務災害等として認められることがあり得るものである」と回答しています。

 どのようなことを行っていた場合に労災に該当するのかまでは明確になっていませんが、このような質問および答弁が行われたことにより、手引きの改訂も含め、今後、明確に示されることが期待できます。

 質問および答弁の全文は以下のURLから確認できます。
http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index_shitsumon.htm


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2012年3月28日「基礎からわかる職場のメンタルヘルス 名古屋市ホームページでダウンロード開始」
https://roumu.com
/archives/51920682.html

参考リンク
厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引きについて」
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/10/h1014-1.html

(宮武貴美)

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