中国人事管理の先を読む!第43回「職務給の要件「内的公正の原則」」
中国の人事制度は、社員個々が担当する職務に応じた給与の決定を行う「職務給」が相応しい、というお話をこのコラムでしてきました。日本企業の多くが使っている職能資格制度は日本独自の人事制度であって、海外の企業ではこの職務給が極めて一般的な人事制度であると言えます。では、職務給が成立する要件、あるいは職務給はどのようにして構築されるべきなのか、今回はその解説をしてみたいと思います。
まず、「職務給における賃金決定の3要素」からご説明します。職務給が職務給である所以には、以下の要素を満たしているかどうかが絶対条件となります。
(1)内的公正の原則
(2)個人間公正の原則
(3)外的公正の原則
この3原則のうち「内的公正の原則」こそ職務給制度を端的に表しているもので、「社員が担当する職務の価値に応じて社員の賃金を決定すべき」という定義になります。つまり、「社員の仕事は単一的ではなく、会社や組織にとってそれぞれ仕事の価値、重要性があるはずだから、賃金もその価値、重要性に応じて変えるべきだ」というものです。この原則の中には、中国でも一般的な「同一労働同一賃金」の考え方が包括されており、「賃金は労働の対価である」という思想も反映されています。
賃金は労働の対価という考え方は日本の労働基準法にも謳われていますが、実際、日本の人事制度上では賃金は「労働の対価」ではなく、「能力の対価」になっています。このため年功や勤続年数など、属人的な要素で賃金が決定されています。
この「内的公正の原則」は、職務給にとって大きな意味を持ちます。では、仕事の価値や重要性をどのように決めるのでしょうか?そのモノサシとなる因数は様々ですが、代表的なものに「経営理念や経営方針、事業そのもの」「市場からみた人材の希少性」「人材の代替性」「業務遂行能力の習熟に要する時間の長短」「担当業務の複雑さ、労働環境」などが挙げられると思います。
このような判断基準を参考に、あとは企業によって基準の追加を行いながら、企業にとっての職務価値を測るモノサシを作っていくわけです。そしてそのモノサシで測られた職務価値に応じて、社内の賃金水準を決定し、社員の給与ガイドラインを決めていくことになります。
このように職務給は重要な職務に従事する社員に対しては高い賃金を支払い、重要ではない職務や困難ではない職務を担当する社員には低い賃金を支払うべきであるという考え方に基づいて成立していることを理解していただきたいと思います。
参考リンク
ビジネスフリーペーパー「Bizpresso」概要
http://bizpresso.net/about
(清原学)
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