中国人事管理の先を読む!第47回「日中人事制度の相違(2)人事異動」

中国人事管理の先を読む!第47回「日中人事制度の相違(2)人事異動」 今回は日本と中国の人事制度の相違点のうち、社員の人事異動に関する方法や考え方の違いについて解説したいと思います。

 日本ではジョブローテーションが一般的に企業組織で実施されていますが、まず中国では日本のようなローテーションが難しいという認識が必要です。その理由として、2つの要因があります。

 ひとつは「職務間の賃金格差」の存在です。中国の企業組織の中では、社員の賃金が担当する職務に応じて決定される、いわゆる職務給が採用されているため、日本のように平均された賃金ではなく、担当職務によっては賃金格差に大きな隔たりがあるということです。従って、会社の事情で社員を異動させる場合、職務によっては賃金が現在の水準から下がってしまうこともあり得るわけで、通常これに対しては社員の同意を得られにくいことが想定されます。

 次に、中国人社員は自己の専門性を活かし、仕事を遂行していくことに対して非常に強いモチベーションを持っています。極端に言えば、大学で勉強してきたことをそのまま仕事で活かしたいという欲求が強く現れてきます。そのため、自分が担当したことのない業務、あるいは自分が望まない業務を必然的に担当するローテーションに対しては抵抗感があります。

 このような事情から、中国での人事管理では日本人管理者が思うほどジョブローテーションは容易ではありません。管理職に関して、さほど賃金格差が現れない場合であれば、積極的にジョブローテーションを人事制度の一環として実施しても効果を得られると思います。

 ただ、日本と中国とではジョブローテーションの方法にひとつ大きな違いがあることは認識しておく必要があります。それは、日本では人事異動として人事部等の指名や命令によってローテーションが行われますが、中国やその他欧米企業では、あくまでも「選抜方式」で行われるということです。異動先のポジションに対して、候補者を数名挙げ、その中から人材のアセスメント(適性調査)を行って、最終的にもっとも相応しい者をそのポジションに異動させる方法が一般的です。この方法であれば、異動によるミスマッチが起こりにくく、適材適所を実現できるというメリットがあります。

 中国や欧米企業が組織マネジメントに強い理由は、このような異動に関する手法の違いから現れているのです。


参考リンク
ビジネスフリーペーパー「Bizpresso」概要
http://bizpresso.net/about

(清原学)

当社ホームページ「労務ドットコム」にもアクセスをお待ちしています。

facebook最新情報の速報は「労務ドットコムfacebookページ」にて提供しています。いますぐ「いいね!」」をクリック。
http://www.facebook.com/roumu

当ブログの記事の無断転載を固く禁じます。