中国人事管理の先を読む!第48回「「中国所得分配改革案」が年内公布の見込み」

「中国所得分配改革案」が年内公布の見込み 「ジニ係数」。経済学では馴染みの深い統計数値のひとつで、国家における国民の所得の差、正確に言えば、国民の所得配分の不公平な状態を表す数値です。ジニ係数は0から1までの間の数値で表され、0は完全に公平な状態、1は完全に不公平な状態を表しています。つまり、1に近くなるほどその国家における国民の所得格差は大きくなるというものです。直近の統計によれば、中国のジニ係数は0.5を超えました。ちなみに日本は0.28、アメリカは0.3です。これら国際比較をしても明らかなように、中国のジニ係数は他の先進国に比べ非常に高い数値を表しており、かつ次第に1に近づきつつあることがひとつの社会問題として近年注目されています。

 本来、中国は社会主義国家ですので、社会主義のイデオロギーとしては所得の分配が公平な社会であるはずなのですが、1978年から始まった改革開放政策や社会主義市場経済への移行に伴い、鄧小平による「先富論」によって経済システムが「改革」され、市場に対する外国資本の「開放」がなされたため、急速な経済成長を遂げることができた一方で、企業や国民の資本や機会の差に基づいた所得格差を生み出してきました。しかも、ここ数年のインフレやGDPの下落という社会的要因も絡み、その差は年々大きなものとなっています。この状態が社会不安を生み出し、結果的に純粋な社会主義への思想回帰や国民の不満につながるため、中国政府にとっても優先的に対策を講じるべき社会問題となっていました。

 そこで中国政府は今年に入り、「所得の分配に関する改革方針」を決定したわけなのですが、その方針を受け、中国人力資源社会保障部も今年末までに「所得分配制度政策」を公布するということが先日、発表となりました。制度改革のポイントは「給与制度改革」です。既に「公務員手当に関する規範化」「企業の業績給制度の導入」「最低賃金制度のさらなる厳格化」など、具体的な改革案が出ています。

 これらの改革案を分析してみますと、結果的に企業に対しては引き続き最低賃金の引き上げが必須の条件として義務付けられること、企業の賃金制度にまで行政が関与してくることが考えられます。国の政策として所得水準の引き上げが打ち出されている以上、企業としてはこれら政策の発表と実施や法律の公布など、今後の動きについて情報収集を徹底する必要があります。


参考リンク
ビジネスフリーペーパー「Bizpresso」概要
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(清原学)

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