中国人事管理の先を読む!第66回「賃金団体交渉規定」

中国人事管理の先を読む!第66回「賃金団体交渉規定」 先日北京市で、ある条例に関する立法会議が開催されました。この会議は北京市の労働組合(工会)で構成される「工会第十二期委員会第十回全体会議」という名称のもので、会議の席上、議論の中心となったのは、企業において経営者と従業員間で行われる賃金の団体交渉に対し、その法的根拠を持たせ、賃金交渉を円滑にかつ従業員側に有利に進められるようにするというものです。いわゆる「北京市賃金団体交渉規定」と呼ばれる条例です。

 北京市ではこの条例を年内に成立、公布させ、来年から本条例を根拠として企業内の工会が賃上げ交渉を行うことができるよう、各工会に対して指導を実施していくという内容を表明しています。中国では労働組合の全国組織である中華総工会や、その下部組織となる各省市の総工会、企業内の工会の権威が年々上昇し、今では強大な力を有するに至っています。さらに2008年1月から施行されている中国労働契約法のような従業員保護に立脚した法制度の後押しもあり、企業と工会は労使という関係の色が濃くなってきています。

 現在、北京市内において従業員と「賃金に関する集団契約」を締結している従業員100人以上の規模の企業は2,908社あり、その従業員規模は185万人に達しているとのことです。しかし、集団契約は締結しているものの、賃金に関して団体交渉を実施していない企業も20%以上あるようで、北京市総工会としてはこの団体交渉の実施漏れをできる限り減らしていき、工会、すなわち従業員からの要望を企業に届かせる狙いがあるようです。

 本年上半期に最低賃金の引き上げがあった地域は、全国で17省市に上っています。また、その平均引き上げ率は17.6%に達しています。さらに各行政区では、賃金に関する「昇給ガイドライン」も全国10の省市で今年発表があり、平均的な昇給基準線は15%と、こちらも高い水準となっています。

 中国政府や工会組織からの指導によって今後、賃金決定プロセスというものも法整備や行政権の強化により、企業と従業員との対立構造がますます濃厚になってくるものと考えられます。工会の権限強化という方針に合わせ、自社の工会のあり方の見直しや、まだ工会を持っていない企業は早々に設置を義務付けられる等、対応に追われることが予見されますので、今後の動きに注目していきたいところです。


 参考リンク
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(清原学)
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