中国人事管理の先を読む!第74回「工会との賃金団体交渉」
先般、上海市労働局の機関紙である「労働報」に「企業と工会との賃金団交」に関する記事が掲載されました。その記事によると、上海市総工会が市内企業約57,000社に対し、企業内工会との賃金に関する団交を受諾するよう通知・指導を行ったとのことです。さらにこの通知を行った企業のうち、なんと98.25%の企業が団交に対する積極的な姿勢を回答しているとのことでした。
3年前、中華総工会、いわゆる中国の労働組合の総本山が「2つの一般化」という政策方針を発表しています。この2つとは、企業と従業員との間で締結する包括的契約である集団契約の締結率を90%とする、企業内における工会との賃金に関する団体交渉率を80%とするという目標です。この2つの一般化が発表されたタイミングと時を同じくして、国務院法制弁公室は「賃金条例」の公布も目論んでいましたが、金融危機後の景気回復が十分でなかったこと、2010年に中国社会保険法が先に施行されたことなどから、公布は先送りされました。今回の総工会による指導措置は、近い将来、法律によって従業員の賃金水準の維持を保障させる試金石になると考えられます。
中華総工会、地方労働局による賃金交渉の指導を行う対象企業は、次の基準によって選ばれる見込みとなっています。
(1)賃金交渉の体制が確立されない企業
(2)労使による賃金に関する集団契約が締結されていない企業
(3)集団契約は締結されているが労働報酬に関する制度が確立されていない企業
(4)世界トップ500に含まれる在上海企業
(5)従業員の賃金水準が上海市従業員の平均賃金50%を下回っている企業
(6)長期間、昇給実績がない企業
(7)賃金の上昇率が上海市の賃金ガイドラインの下限を下回っている企業
(8)集団契約が満了し、更新や改めて締結する必要がある企業
さらに上海市総工会は今後、従業員100名以上の企業を対象に、総工会自らが企業との賃金交渉を実施し、集団契約の締結を促していくことを発表しています。中国中央政府は、中国労働法に関する細則法整備を続けており、数年間の悲願であった「賃金条例」の公布に向けて、いよいよ具体的な行動の実施と、従業員の待遇改善、労働組合の合理的な組織化に動き始めたと言えるでしょう。
参考リンク
ビジネスフリーペーパー「Bizpresso」概要
http://bizpresso.net/about
(清原学)
http://blog.livedoor.jp/kiyoharamanabu/
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