無期労働契約転換申込権発生前に実施する能力試験と雇い止め
今国会では、人事労務に関連するいくつかの法案が提出されていますが、今週、成立するのではないかと思われるものに「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法案」があります。この法律は労働契約法に基づく無期転換申込権発生までの期間の特例について定めた法律案となっています。具体的な内容については、法律の成立後に取り上げたいと思いますが、このような特例が議論されるほど労働契約法の無期転換申込権については関心が高くなっているということが分かります。そこで今日は正社員転換制度と5年での雇止めの関係について考えておきましょう。
平成25年4月に施行された改正労働契約法では、有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えた場合には、無期労働契約転換申込権が発生するとされています。企業としては無期転換に関し、どのように対応するか、徐々に検討に入らなければならない時期になってきているかと思いますが、ここに来て求人倍率の上昇による人材確保が難しくなっていることや、非正規から正規労働者への登用増加などにより、無期転換申込権が発生する前に人材を判別したいと思う企業も増加していることでしょう。これに関し、厚生労働省の資料「労働契約法に係る質疑応答」には、以下のような質疑が掲載されています。
■問
通算契約期間が5年を超える前に能力判断のために試験を行い、試験に合格した者は正社員とし、不合格の者は5年までに雇止めすることは可能か。
■答
社内でそのような正社員登用制度を設けることは禁止されない。なお、紛争防止の観点からは、契約締結時等において、労働者に対してそのような制度が設けられている旨を十分に説明することが望ましい。
正社員登用制度のような制度を設けることで、すべてが解決されるわけではありませんが、このような制度を設けて、しっかりと運用することで、労働者としてはモチベーションがアップし、会社としても必要人材を見分ける意識が高まることになるかと思います。そのため、一つの選択肢として検討する余地があるのではないでしょうか。
なお、今後、施行される改正パートタイム労働法では、「パートタイム労働者を雇い入れたときの事業主による説明義務の新設」が盛り込まれており、正社員転換推進措置についても説明の必要性が出てくることが予定されています。この観点からも、今後、正社員登用制度の検討を進めてもよいのかも知れません。
参考リンク
参議院「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法案」
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/186/meisai/m18603186048.htm
(宮武貴美)
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