依然として監督署への相談が多い長時間労働・賃金不払残業

過重労働 厚生労働省では、11月を過重労働解消キャンペーン期間として、過重労働や賃金不払残業の撲滅に向けた集中的な取組を行っていましたが、先日、「過重労働解消相談ダイヤル」と「労働条件相談ほっとライン」の相談結果が発表されました。

 まず「過重労働解消相談ダイヤル」は、2015年11月7日(土)に都道府県労働局の職員が直接相談を受け付けたもので、488件の相談が寄せられました。また「労働条件相談ほっとライン」は、委託事業により平日夜間・土日に無料で相談を受け付けているもので、2015年4月1日から11月7日までの約7か月間に16,788件の相談が寄せられました。 相談内容のうち多いものを見てみると以下のようになっています。
過重労働解消相談ダイヤル
 長時間労働・過重労働 236件
 賃金不払残業 218件
 休日・休暇 40件
労働条件相談ほっとライン
 長時間労働・過重労働 690件
 賃金不払残業 1,250件
 休日・休暇 1,366件

 また寄せられた相談のうち、特に深刻と思われる事例がいくつか掲載されています。実務上、どのような点が問題となっているのかを確認する意味で、以下で主なものを取り上げましょう。
[長時間労働・過重労働]
労務管理の責任者(製造業)
 36協定において、1か月の残業時間の上限を42時間(特別条項80時間、年6回まで)としているが、年間通して1か月100時間を超える者や、1か月160時間を超える者がいる。毎月開催されている安全衛生委員会において、社長に対し、衛生管理者や産業医から残業時間の状況を報告し、長時間労働の削減に向けた対策を講じるよう求めても、当事者意識がなく、一向に対策が講じられない。
コールセンターのオペレーター(その他の事業)
 業務拡大に伴う人員不足により、1か月140時間程度の残業をしている。会社は、1か月100時間を超える残業を行った者に対して、医師による面接指導制度を実施することとしているが、自ら申し出たにも関わらず、医師による面接指導を実施してもらえなかった。
[賃金不払残業]
食料品の製造(製造業)
 毎日午前6時から翌日午前2時くらいまで働いており、1か月200時間を超える残業をしているが、労働時間が管理されておらず、残業手当は一切支払われない。また、定期健康診断も実施されていない。事業場内では、長時間労働によりうつ病を発病し、自死した労働者もいるようだ。
証券会社の営業マネージャー(金融・広告業)
 1か月100時間を超える残業をしている。残業時間は自己申告制であるが、マネージャーというのは名前だけで、責任や権限が何もないにも関わらず、実際の残業時間数を申告しても、毎月役職手当として3万円支払われるだけで、残業手当が一切支払われない。
[休日・休暇]
パン工場の製造責任者(製造業)
 年間通して1か月150時間を超える残業をしている。休日は、大晦日と元旦の2日しかなく、年次有給休暇も取得できない。残業手当として毎月8万円支払われるが、100時間分以上の残業手当が不足している。
工場の製造ライン(製造業)
 10年間継続勤務している。上司から、準社員に年次有給休暇はないと言われ、取得を認めてもらえない。

 寄せられた相談のうち、労働基準関係法令上、問題があると認められるケースについては、監督署に情報提供を行い、監督指導を実施するなど、必要な対応を行うとしています。会社でこのような取扱いがされていないか早急に点検しておくことが求められます。


参考リンク
厚生労働省「「過重労働解消相談ダイヤル」・「労働条件相談ほっとライン」の相談結果を公表」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000104623.html

(福間みゆき)

当社ホームページ「労務ドットコム」にもアクセスをお待ちしています。

facebook最新情報の速報は「労務ドットコムfacebookページ」にて提供しています。いますぐ「いいね!」」をクリック。
http://www.facebook.com/roumu

当ブログの記事の無断転載を固く禁じます。