社会保険適用拡大 年金受給者の一部に設けられる予定の特例措置

44年特例 以前からこのブログでも頻繁に取り上げているパートタイマーへの社会保険の適用拡大ですが、法施行が約1ヶ月後に迫り、実務面での疑問の声をよく聞くようになりました。

 その一つが、現在、年金を受給している人の取り扱いです。働きながら年金を受給する人は、年金額の一部または全部が支給停止となることがあります(在職老齢年金)。ただし、この在職老齢年金については、厚生年金保険の適用事業所に勤務し、70歳未満で厚生年金保険に加入している人、70歳以上で厚生年金保険に加入する条件の人が対象となっています。そのため、年金の支給停止の対象とならないいわゆる4分の3基準以下の労働日数・労働時間数で勤務している人も多くいます。

 今回、パートタイマーへの社会保険の適用拡大に伴い、年金受給者で拡大の対象に該当した人も、当然に社会保険に加入することになっています。このため、これまで満額受給していた年金が、社会保険への加入に伴い、支給停止になる可能性が出てきます。支給停止が行われるか否かは、受給している年金額と標準報酬月額によって異なるため一概には言えませんが、社会保険料の負担が新たに発生することに加え、年金が支給停止になるとその負担は相当大きなものとなるでしょう。

 特に、特別支給の老齢厚生年金を受給している65歳未満の人のうち、厚生年金被保険者期間が44年以上ある長期加入者や障害者の特例措置対象者については、老齢年金の定額部分が支給しており、厚生年金保険に加入することで、年金の定額部分が全額支給停止となり、支給停止額がかなり大きなものになります。

 そのため、現在、この定額部分の全額支給停止の措置について、同じ事業所で引き続き働いている人が平成28年10月1日に被保険者になったときなど一定の要件を満たす場合に、定額部分の支給停止を行わないこととする経過措置が設ける予定になっています。現在、パブリックコメントを実施中で、正式には9月下旬公布、平成28年10月1日施行の予定となっています。


参考リンク
厚生労働省「平成28年10月から厚生年金保険・健康保険の加入対象が広がります!(社会保険の適用拡大)」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/2810tekiyoukakudai/
パブリックコメント「会保険 /国民年金、厚生年金保険等公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置に関する政令案(仮称)に関する御意見募集(パブリックコメント)について」
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495160151&Mode=0
厚生労働省「公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正
する法律の一部の施行に伴う経過措置に関する政令案(仮称)の概要について」
http://krs.bz/roumu/c?c=12763&m=1676&v=5c2a2723

(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/

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