注目の「過労死等ゼロ」緊急対策 その全体像と注目ポイント

過重労働対策 各マスコミで大きく取り上げられた厚生労働省の過重労働緊急対策ですが、早速、その資料が公開されました。その全体像は以下のようになっています。
違法な長時間労働を許さない取組の強化
(1)新ガイドラインによる労働時間の適正把握の徹底
・企業向けに新たなガイドラインを定め、労働時間の適正把握を徹底する。
(2)長時間労働等に係る企業本社に対する指導
・違法な長時間労働等を複数の事業場で行うなどの企業に対して、全社的な是正指導を行う。
(3)是正指導段階での企業名公表制度の強化
・過労死等事案も要件に含めるとともに、一定要件を満たす事業場が2事業場生じた場合も公表の対象とするなど対象を拡大する。
(4)36協定未締結事業場に対する監督指導の徹底
メンタルヘルス・パワハラ防止対策のための取組の強化
(1)メンタルヘルス対策に係る企業本社に対する特別指導
・複数の精神障害の労災認定があった場合には、企業本社に対して、パワハラ対策も含め個別指導を行う。
(2)パワハラ防止に向けた周知啓発の徹底
・メンタルヘルス対策に係る企業や事業場への個別指導等の際に、「パワハラ対策導入マニュアル」等を活用し、パワハラ対策の必要性、予防・解決のために必要な取組等も含め指導を行う。
(3)ハイリスクな方を見逃さない取組の徹底
・長時間労働者に関する情報等の産業医への提供を義務付ける。
社会全体で過労死等ゼロを目指す取組の強化
(1)事業主団体に対する労働時間の適正把握等について緊急要請
(2)労働者に対する相談窓口の充実
・労働者から、夜間・休日に相談を受け付ける「労働条件相談ほっとライン」の開設日を増加し、毎日開設するなど相談窓口を充実させる。
(3)労働基準法等の法令違反で公表した事案のホームページへの掲載

 各種報道では、企業名公表制度の強化が大きく取り上げられていましたが、現実的にもっとも影響が大きいと思われるのが「新ガイドラインによる労働時間の適正把握の徹底」です。ここでは、以下の内容を含む、労働時間の適正把握のためのガイドラインを新たに定め、平成29年より実施するとされています。
①労働者の「実労働時間」と「自己申告した労働時間」に乖離がある場合、使用者は実態調査を行うこと
②「使用者の明示または黙示の指示により自己啓発等の学習や研修受講をしていた時間」は労働時間として取り扱わなければならないこと等を明確化する。

 従来の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」(平成13年4月6日付け基発第339号労働基準局長通達)の内容がさらに進められることになると、実務における影響は大きいでしょう。詳細の内容が注目されます。


参考リンク
厚生労働省「第4回 長時間労働削減推進本部 資料」
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000147006.html
厚生労働省「「過労死等ゼロ」緊急対策の取りまとめについて」
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000147160.html

(大津章敬)

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