パートタイマーに規律ある働き方をしてもらうために必要なこと!

 これまで3回連続で、パートタイマーの採用や雇用契約時の注意点、そして特有の労働条件の制約についてみてきた。今回は引き続き、パートタイマーの就業時の労務管理について取り上げてみることとしよう。



服部社長服部社長:
 私の知り合いの経営する会社は複数県にまたがる小規模店舗での小売販売で業績を急に伸ばしてきたのですが、パートタイマーの数がかなり多くなった結果、どうも職場での労務管理ができずに困っているらしいのです。
大熊社労士:
 なるほど、特に店舗あたりの従業員数が非常に少なかったり、正社員が常時勤務していない場合などの際には、労務管理が問題となりやすいですね。
宮田部長:
 パートタイマーの労務管理問題というと、どのようなことがあるのですか?
大熊社労士:
 そうですねぇ。具体的には、時間にルーズで始業時刻に来ず、いつも遅刻してくる。勝手に早退する。連絡はあるものの勤務当日に突然勝手な理由で休む。その上、有給休暇の事後振替を要求する。さらに無断欠勤が当たり前のようになっている。勤怠把握のための届出書やタイムカードなどの管理を上長や本社など他人任せにしている。このような例が多いのではないでしょうか。
宮田部長:
 いやぁ、そのようなパートタイマーは困りますねぇ。わが社には来て欲しくはありません。
大熊社労士:
 パートタイマーの全員がそうという訳ではありません。このようなケースはごく一部でしょうが、このような状態になってしまっているのはかなりの重症で、職場の規律がひどく乱れ、立て直すのは極めて難しいでしょう。
服部社長:
 原因はどこにあるのでしょう。はやり、所属の管理職が放任していたのですか?
大熊社労士大熊社労士:
 そうですね、規律を乱す行動に対して管理職だけではなく誰も注意をしなくなってきたのではないでしょうか。最初は管理できていたものの、人数が増え業務が増えるに従って、次第にルーズになってきたと推測されます。その他にも、パートタイマー向けの各種ルールやマニュアルなどがきちんと揃っていない可能性も考えられます。このようになってしまった乱れを正すには、かなりのパワーが必要となりますが放置しておく訳にはいきませんので早急に対応が必要です。
服部社長:
 わが社では、これから本格的にパートタイマーを採用しようという段階ですので、今は特に必要ないと思うのですが、参考までにこのようになってしまった場合はどうすれば良いか教えて頂けますか?
大熊社労士:
 社長、「わが社にはいま必要ない」とおっしゃいましたが最初が肝心ですよ。最初にきちんとしたルールで規律ある働き方をしてもらわなければ、ルーズな状態から規律を設け正そうとしても困難ですから、いまのうちからルールは明確にしておきたいですね。
服部社長:
 確かに大熊さんのおっしゃるとおりだ。これは申し訳ない。
大熊社労士:
 さて、規律が乱れてしまった場合の対応方法ですが、やはり基本に立ち返ることです。まず就業時のルールについて改めて知ってもらうために社内研修会などから始めるとよいでしょう。この研修は人事や総務担当者から実施してもらいます。
宮田部長:
 総務で担当するということですが、正社員向けに実施している入社時の説明と同様に考えてよいでしょうか?
大熊社労士:
 基本的にはそれで良いと思いますが、残業や有給休暇などパートタイマー特有の取り扱いがありますのでその点は追加し、適用されない事項については省略してください。さらに、現場での教育も重要です。現場で教える内容としては、作業そのものについてのルールや注意点のほか、配属された現場での始業時刻における準備、終業時刻における後片付けや引継ぎ手順、報告・連絡・相談の仕方、休暇をとる際の手順などの注意事項があります。これらの説明は1回だけで終わりとせず、必要に応じて繰り返し実施することが必要です。また、新しいパートタイマーが入社すれば、その都度今の説明をした上で、職場の管理職にも教育したことや内容について伝えてください。
宮田部長宮田部長:
 なるほど、規律ある会社にするためには、職場のルールと教育が必要だということですね。ところで、パートタイマーであっても職場の規律を乱したときは、制裁を課しても良いですよね?
大熊社労士:
 はい、無断で遅刻や欠勤を繰り返すなど職場の規律を著しく乱す者に対してはパートタイマーであっても制裁を課すことは必要です。そのためには、パートタイマーに適用される就業規則でどのような制裁が行われるのかを予め具体的に定めておかなければなりません。そして、実際にそのような行為があった場合には、行為と職場への影響とのバランスを考えて適切な制裁を課すことになります。その際、どういう理由で制裁をするのか、今後会社としてどうして欲しいのかをしっかりと説明し改善に向けて努力してもらうことが必要です。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。前回に続きパートタイマーの雇用について取り上げてみました。杜撰な労務管理は職場の規律を一気に崩してしまいます。そのような状態に陥らないためには職場のルールを明確にして、指導教育を繰り返すことが必要です。なお、パートタイマーは労働時間をはじめ、いろいろな制約条件のもとで働いていることが多いので、指導教育の担当者を現場の管理職だけとせず、人事総務担当者も一定期間ごとに面談をし、別角度から指導教育することも一つも工夫でしょう。


 パートタイマーの人数が多くなればなるほど、管理することが多くなりますが、放任しておくと職場の風土は悪くなる一方です。一人の労働者としてその能力を十分に発揮し、生産性を上げてもらうためには、パートタイマーであっても会社の基本方針をよく理解し、規律ある働き方をしてもらいましょう。そのためにはまず説明と指導教育を怠らないようにすることが必要です。


[関連条文]
短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/cgi-bin/t_docframe.cgi?MODE=hourei&DMODE=CONTENTS&SMODE=NORMAL&KEYWORD=&EFSNO=1336



関連blog記事
2007年6月4日「パ-トタイマ-就業規則」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/54414619.html
2007年2月5日「パートタイマー労働契約書」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/52080828.html
参考リンク
厚生労働省「パートタイム労働法のあらまし(事業者向けパンフレット)」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/parttime1.html
大阪労働局「パートタイム労働者の雇用管理改善について」
http://osaka-rodo.go.jp/joken/kinto/part.php


(鷹取敏昭)


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