勤続1年未満の社員からの介護休業申し出に応じる必要はありますか?
宮田部長のところに、社員から介護休業を取得したいとの申し出がなされた。服部印刷では、初めて介護休業の申し出があったため、大熊社労士に相談することとした。
宮田部長:
大熊先生、こんにちは。早いもので8月に入りましたね。
大熊社労士:
そうですね。しかし、今年はなかなか梅雨があけませんでしたが、やっと今日、東海と近畿で梅雨明けしたようですね。ここのところ九州や中国地方を中心として集中豪雨が続いていましたが、やっと夏本番といったところでしょうか。
宮田部長:
本当にそうですね。ところで今日は介護休業について教えて頂きたいと思っています。実は先日、当社で初めて介護休業を取得したいという申し出を社員から受けたのですが、どのように対応すれば良いのか分からなくて…。
大熊社労士:
介護休業ですか。介護休業は育児休業と比較すると期間が短く、使い勝手があまり良くないので、他社の事例を見てもあまり取得されていないようですから、御社でも戸惑ってしまいますね。
宮田部長:
そうなんです。今回の申し出を受けて初めて介護休業に関する当社の規程を読み返してみたのですが、当社の制度は法定通りの内容となっており、勤続1年未満の者などについては対象外とする労使協定を結んでいます。実は、今回申し出のあった社員というのは入社してまだ1年に満たない者なのですが、この場合ですと介護休業は取得できないということになるのですか?
大熊社労士:
そうですね。そうなりますね。そもそも育児・介護休業法第6条第1項および第12条第1項において、事業主は要件を満たした労働者から育児・介護休業の申出があった場合にはそれを拒むことはできないとされています。しかし、この条文にはただし書きがあり、「一定の労働者につき育児休業・介護休業をすることができないものとして労使協定で定める」とあり、勤続1年未満の者についても労使協定を結ぶことによって、育児・介護休業を取得できないとすることができるようになっています。
福島さん:
なぜ1年未満の者を対象から除外できるようになっているのでしょうか。
大熊社労士:
育児休業の期間については最長1年(場合によっては1年6ヵ月)、介護休業については通算して93日と、比較的長期間にわたります。そのため事業主の負担とのバランスで、休業を取得するにあたっては一定期間企業に貢献したことを要件とすることも、労使の合意があれば認めるという背景があり、その必要とする雇用期間が1年にされたという訳です。
福島さん:
なるほど。申し出のあった社員は、来月になれば勤続1年となるのですが、この労使協定に定めた「勤続1年未満」というのはいつの時点で判断するのでしょうか。
大熊社労士:
これは介護休業の申し出の時点で判断することになります(平成14年3月18日 雇児発第0318003号)。そのため、社員の方は現時点で申し出を行っても介護休業を取得することはできませんが、来月であれば取得できることになります。
宮田部長:
それは良かった。ということは同じように育児休業についても、育児休業の申し出の時点で判断するということでよろしいですね。
大熊社労士:
そのとおりです。子が生まれた時点で勤続1年未満であった場合、会社は育児休業の取得を拒むことができるとされていますが、その後雇用期間が1年以上となった時点で、再度、社員が育児休業の申し出をすれば休業を取得できるということになります。
宮田部長:
規程をみたところ、介護休業については2週間前までに申し出ることになっていますので、ちょうど1年になった時点で手続きをしてもらうように調整します。
大熊社労士:
分かりました。また何かありましたら、聞いてください。
>>>to be continued
[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
こんにちは、大熊です。今回は介護休業について取り上げてみましたが、以下では育児・介護休業にかかる期間雇用者の取扱いについて補足しておきましょう。平成17年4月1日の改正により、期間雇用者についても原則として育児・介護休業の対象者となり、申出時点において以下の①、②の要件を満たしていれば、同休業を取得することができるようになりました。
同一の雇用主に引き続き雇用された期間が1年以上であること。
育児休業の場合:子が1歳に達する日を超えて引き続き雇用されることが見込まれること(子が1歳に達する日から1年を経過する日までに労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかである者を除く)。介護休業の場合:介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日を超えて引き続き雇用されることが見込まれること(93日経過日から1年を経過する日までに労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかである者を除く)。
なお、労働契約が形式上期間を定めて雇用されている場合であっても、その契約が実質的に期間の定めのない契約と異ならない状態となっている場合には、上記の要件を満たすか否かにかかわらず休業の対象となる可能性があります。また、期間雇用者については雇止めにかかわるトラブルが多いことからも、毎回契約の手続きを行い、手続きを形骸化させないことが望まれます。
関連blog記事
2009年8月3日「8月1日より支給申請受付が開始された高額医療・高額介護合算療養費制度」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51595741.html
2009年6月29日「残業免除の義務化等を盛り込んだ育児介護休業法が成立」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51576520.html
(福間みゆき)
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