身元保証人への損害賠償請求は社員が退職するまで有効ですか?
服部印刷では、営業担当者が納品先から直接現金を回収している。そのため、リスク管理として万が一、担当者がその現金を着服した場合の対応について、大熊社労士に相談することにした。
宮田部長:
大熊先生、こんにちは。朝晩、寒くなってきましたね。
大熊社労士:
そうですね、来週はもう12月ですよ。年末調整などで忙しくなりますので、風邪やインフルエンザにかからないように、お互い気をつけましょう。
宮田部長:
近頃のマスコミ報道において、社員が会社のお金を着服したというニュースを耳にしますが、当社でも営業担当者が納品先から現金を回収してくることがあり、万が一、社員がその現金を着服していたらと最近、少し心配しているんですよ。
大熊社労士:
そうですね。こういう時期は横領の事件が増えますから、注意が必要ですね。場合によっては、社員本人が返せない金額になっていることもありますし。そういえば御社では入社時に身元保証書を取られていますか?
宮田部長:
はい。正社員については入社時に取っています。
大熊社労士:
この身元保証ですが「身元保証ニ関スル法律」という法律があります。そもそも身元保証とは、万が一、採用した社員が会社に損害を与えた場合に、身元保証人がその賠償を行うことを約束したもので、身元保証人と会社との契約なのです。
福島さん:
社員と会社との契約ではなく、身元保証人と会社との契約なのですね。身元保証人となる場合は、責任の重さを理解しておく必要がありますね。
大熊社労士:
そうなのです。ただし入社してからその者が退職するまで身元保証を行うとなると、長期間、身元保証人は責任を負うことになります。そのため、身元保証に関する法律において、身元保証期間については期間を定める場合は5年、期間を定めない場合は3年までと決められています。
宮田部長:
身元保証には期限があるということですか。当社の身元保証書には期間の定めがないので、入社日から3年間しか有効でなかったということですね。多くの社員については、有効期限が切れてしまっていますが、この場合、どのようにすれば良いのでしょうか。
大熊社労士:
万全に行くのであれば、全社員の契約を更新することです。ただし、3年も勤務した社員について全員更新するのかどうかは検討が必要でしょう。場合によっては不正が発生しやすい営業担当者や経理担当者に限定しても良いですね。
宮田部長:
確かに全員から取る必要はなさそうですね。身元保証を取っておく必要がある者に限定して、更新の忘れがないように管理していきます。
大熊社労士:
身元保証書は万が一の場合のリスク対策となりますので、そもそも不正が起きないようにチェック体制をとっておくことが一番重要ですね。
宮田部長:
現在、どのようなチェック体制となっているのか確認してみます。
>>>to be continued
[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
こんにちは、大熊です。
[関連法規]
身元保証ニ関スル法律 第3条(使用者の通知義務)
使用者ハ左ノ場合ニ於テハ遅滞ナク身元保証人ニ通知スベシ
一 被用者ニ業務上不適任又ハ不誠実ナル事跡アリテ之ガ為身元保証人ノ責任ヲ惹起スル虞アルコトヲ知リタルトキ
二 被用者ノ任務又ハ任地ヲ変更シ之ガ為身元保証人ノ責任ヲ加重シ又ハ其ノ監督ヲ困難ナラシムルトキ
身元保証ニ関スル法律4条(保証人の契約解除権)
身元保証人前条ノ通知ヲ受ケタルトキハ将来ニ向テ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得身元保証人自ラ前条第一号及第二号ノ事実アリタルコトヲ知リタルトキ亦同ジ
関連blog記事
2007年8月10日「身元保証契約更新書」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/54766406.html
2006年11月30日「身元保証書」
http://blog.livedoor.jp/shanaikitei/archives/50843052.html
(福間みゆき)
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