自転車通勤を許可する際の注意点について教えてください

 最近はようやく朝晩は涼しくなり、日中でも30度を下回る日も出てきた。服部印刷でもスポーツの秋ということで、サークル活動が活発になってきているが、そんな中、自転車通勤をしたいという従業員からの声があがってきた。



宮田部長宮田部長:
 大熊先生こんにちは。だいぶ過ごしやすくなってきましたね。実は少し涼しくなってきたせいか、従業員から自転車通勤をしたいという声が出てきましてね。実は私も先日の健康診断で、腹囲が増えてしまっていて、自転車通勤をしてみようかな?なんて思ってみたんですけれどもね。制度化するにあたって、ポイントをお聞かせ願えませんか?
大熊社労士:
 それは素晴らしいですね!実は私も、昔サッカーをやっていたので、先日久しぶりにフットサルに参加してみたのですが、まったく動けませんでした。スリムなつもりでいたのですが、更衣室で着替えるのが少しお恥ずかしいお腹になってしまっていて….。宮田部長のように毎日の通勤に習慣として取り入れることはとても良いことだとおもいますよ。
宮田部長:
 毎日!?…ええ、毎日頑張りますよ!
福島さん:
 宮田部長がやるなら、私も自転車通勤に挑戦してみようかな?
大熊社労士:
 それでは早速、お二人のためにも自転車通勤の規定を整備する際のポイントについて説明しましょう。規定より何よりまず一番に大切なことは、「自転車は車両。自動車通勤と同じ」という意識を持っていただくことです!
宮田部長:
 え、自転車なのにですか!?
大熊社労士大熊社労士:
 宮田部長、いいリアクションですね~(笑)。ほとんどの従業員さんがそのように反応されると思うのですが、実は、道路交通法においては、自転車は軽車両の一つと定義づけられています。ですから会社としては基本的には車両通勤と同じように、管理していくことが必要なんです。特に怖いのは通勤途上での事故ですね。
福島さん:
 自動車通勤における事故への対策としては、当社では任意保険の加入を義務付けています。自転車についても民間保険への加入を義務付けなくてはならないのでしょうか?
大熊社労士:
 さすが福島さん。そのとおりです。従業員が万が一加害者になってしまったときのために、民間保険への加入は必須ですね。
宮田部長:
 自転車の保険ですか、そういえば娘が中学に自転車で通っていたときに、学校で自転車の保険に加入していたことがあったような気がします。
大熊社労士:
 そうですね。自転車通勤を認めている中学や高校では学校でまとめて加入することもあるようですね。「TSマーク付帯保険」という名前なのですが、聞いたことはありますか?
宮田部長:
 名前までは覚えていないなぁ。でも確か、銀色の枠の中心に赤い丸のマークのシールがはってあった様な気がします。
大熊社労士:
 そうですね。実は「TSマーク付帯保険」には、2種類あって、赤色TSマークと青色TSマークがあります。補償内容も2種類あって、自転車搭乗者が交通事故により障害を負った場合に適用される「障害補償」と、自転車搭乗者が第三者に障害を負わせてしまった場合に適用される「賠償責任補償」があります。保険金額については、こちらの表にあるように赤色TSマークのほうが高くなっています。娘さんは、補償の厚い赤色TSマークをつけていたということですね。
自転車通勤を許可する際の注意点について教えてください宮田部長:
 お、だんだん思い出してきましたよ。たしか、ちゃんと自転車販売店で整備をしてからじゃないと保険を付けられないんですよね?
大熊社労士:
 そのとおりです。そもそも「TSマーク付帯保険」は「自転車安全整備士による、点検、整備を受けた安全な自転車であることを示すTSマークに付帯した保険」ですから、自転車安全整備士のいる自転車販売店に自転車を持ち込んで自転車を整備してもらい、問題ないと判断されないとTSマークのシールがもらえません。もし前輪のブレーキが効かない状態の自転車だったら、シールはもらえない、つまり保険は付保できないことになります。
宮田部長:
 それは安心ですね。自転車の整備不良で従業員が加害者になってしまった場合に、会社が整備不良の自転車での通勤を許可していたとなったら…と考えると青ざめてしまいますね。
大熊社労士:
 そうですね。ただしこの保険の有効期間は1年間なので、最初に許可したときだけでなく、定期的に保険の付保を確認する必要があります。
福島照美福島さん:
 車両通勤者には、毎年4月1日に免許証と任意保険の写しを出してもらっているので、それと併せて提出してもらえばいいですね。
大熊社労士:
 そうですね。自転車通勤については注意すべき点がまだまだたくさんありますので、次回もまた自転車通勤についてもう少しお話させていただきましょう。


>>>to be continued


[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。自転車通勤についてもっとも注意すべきポイントは「自転車なのに」と安易に考えてしまう点です。最近は自転車による重大事故が頻発しており、無灯火で携帯電話を使いながら片手で自転車を運転していた女子高生が、看護師女性に追突し、被害者女性に傷害が残り、職を失ったケースでは、裁判所が5000万円の支払いを命じた例も見られます。企業として自転車通勤の許可基準を設ける場合には、「保険加入」と合わせて「安全運転教育」を受講させることも重要なポイントとなるでしょう。


[参考条文]
道路交通法 第2条(定義)
 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
(中略)
十一 軽車両 自転車、荷車その他人若しくは動物の力により、又は他の車両に牽引され、かつ、レールによらないで運転する車(そり及び牛馬を含む。)であって、身体障害者用の車いす、歩行補助車等及び小児用の車以外のものをいう。



関連blog記事
2010年4月21日「日経ビジネスアソシエ 5月4日号「急増する自転車ツーキニスト」」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51725337.html
2009年9月12日「ビジネスガイド2009年10月号「従業員の「自転車通勤」をめぐる問題点と社内規程・書式の作成例」」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51618062.html
2009年6月3日「[ワンポイント講座]社員の自転車通勤を許可する場合の留意点」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/51563904.html


参考リンク
財団法人日本交通管理技術協会「TSマーク付帯保険とは」
http://www.tmt.or.jp/safety/index3.html


(中島敏雄)


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