新入社員を紹介してくれた社員に報奨金を支給したいのですが
服部印刷では業務の拡大にあわせ、社員の募集を行っていたのだが、なかなか思ったように採用は進んでいなかった。そんな中、社内から一つのアイデアが提案された。
大熊社労士:
こんにちは、そういえば社員の募集を行われているそうですね。いい人は集まりましたか?
宮田部長:
それがなかなかでして…。ニュースで雇用の問題をよく目にするので簡単にいい人が集まるだろうと考えていたのですが、読みが甘かったようです。いい人材というのはいつの時代も不足しているものなのかも知れませんね。
大熊社労士:
確かにそうですね。
宮田部長:
私も困ってしまって社内で対応を話し合っていたのですが、そんなときにある社員から「社員に紹介してもらったらどうか」というアイデアが出てきました。ただ単に紹介してもらうだけではなんですので、採用が決まった際にはいくらかの報奨金を支払おうと考えています。なかなかいいアイデアではありませんか?
大熊社労士:
そうですね。自社の社員であればどのような人材が当社に合うのかも理解しているでしょうから、いい人を紹介してくれるかも知れませんね。ただ、報奨金の支給だけは少し問題があります。
宮田部長:
えっ?問題があるんですか?
大熊社労士:
はい、社員に紹介してもらうのはよいのですが、報奨金の支給については職業安定法で禁止されているのです。
宮田部長:
そうだったんですか。求人広告などで費用を支出するのに比べてもいいアイデアだと思ったんだけどなぁ。
大熊社労士:
そうですね。具体的には賃金や賞与など労働の対価として支払うものの他、旅費や通信費などの実費については支給できるとされていますが、報奨金の支給は法律に違反することとなります。社員を紹介してくれた際に報奨金を支払うという仕組みは昔から多くの企業で見られましたが、応募者を確保しようと甘言を弄するといった弊害が多かったことから法律で禁止されたということです。
宮田部長:
なるほど。法律には歴史があるのですね。ちなみに図書券や商品券などもダメなのでしょうか?
大熊社労士:
そうですね。それも報奨金と同様に解されます。6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金という罰則もありますので注意してくださいね。
宮田部長:
それは大変だ。いいアイデアだと思いましたが、再検討が必要なようですね。
大熊社労士:
はい。手段はともかく、よい人材に出会えることを私も願っています。
>>>to be continued
[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
こんにちは、大熊です。最近は徐々に積極的に人材採用を行う企業が増加しています。しかし、特に中小企業ではなかなか思ったような人材に出会えないというのが共通の悩みであるようです。今回取り上げた社員の紹介制度は以前より医療機関などを中心によく見られる仕組みなのですが、報奨金の支給については職業安定法で禁止されていますので注意が必要です。知らず知らずのうちに法律に違反していることもあるかも知れませんのでご注意ください。
[関連法規]
職業安定法 第40条(報酬の供与の禁止)
労働者の募集を行う者は、その被用者で当該労働者の募集に従事するもの又は募集受託者に対し、賃金、給料その他これらに準ずるものを支払う場合又は第36条第2項の認可に係る報酬を与える場合を除き、報酬を与えてはならない。
(大津章敬)
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