家族手当を誤支給した際の算定基礎・月額変更の取り扱いはどうすれば良いですか?
大熊が遠くから服部印刷の入口を見ると、懐かしい顔がそこにあった。そう、制服姿の福島さんがそこに立っていた。
福島さん:
大熊先生、こんにちは!先日から、少し早目ですが、育児休業から復帰しました!
大熊社労士:
そうですか!復帰おめでとうございます!
福島さん:
ありがとうございます!
宮田部長:
それで、さっそくご相談があるのですが、よろしいですか?
大熊社労士:
はい、もちろん。どうされましたか?
宮田部長:
実は、福島さんが休んでいる間に、私が給与計算のミスをしてしまいまして…。
福島さん:
いえいえ、私がきちんとマニュアル化していなかったのが悪いのです。大熊先生もご存じのとおり、弊社には家族手当があります。大学生以下のお子さんを持つ正社員に支給しているのですが、この支給はお子さんが22歳の年度末を迎えるまでとなっています。
大熊社労士:
浪人や留年したお子さんは、大学生であっても途中で支給されなくなるということですよね。
福島さん:
はい。ですから、毎年4月の給与計算の際に、家族手当を外さなければならない社員がいないか確認をしているのですが、実は1人、今年の4月から外すべき人に対して継続して手当を支給してしまっていました。
大熊社労士:
そうでしたか。
宮田部長:
私もルールを知っていながら確認を漏らしてしまいました。先日、福島さんと一緒に業務の整理の話し合いをしていて、指摘を受けまして…、お恥ずかしい。それで、慌てて対象の社員に説明に行きました。彼も「おかしいな?」と4月には思ったらしいのですが、子供が大学生であればもらえるのだろうと思って聞かずにそのままにしたそうです。
福島さん:
ご本人からは、冬の賞与で調整をして欲しいという依頼がありまして、処理をする予定なのですが、ふと、社会保険のことが気になりまして…。
大熊社労士:
なるほど、算定基礎のことですね。
福島さん:
はい。正しい家族手当の額で計算すると、たまたま標準報酬月額が1等級下がる金額だったので、遡及で提出すべきなのか、それとも今月の給与から減額するので、今月から月額変更として判断するのか迷ったのです。
大熊社労士:
本来減額されるべき月で考えるのか、実際に変更された月からかという判断ですね。
福島さん:
はい。私なりに、日本年金機構のホームページで確認したところ、「遡及して昇給があり、昇給差額が支給された場合は、差額が支給された月を変動月として、差額を差し引いた3か月間の平均月額が該当する等級と従前の等級との間に2等級以上の差が生じる場合、随時改定の対象となります」と書いてあったので、月額変更かと思っているのですが、実際はどうなのですか?
大熊社労士:
さすが福島さん、細かなところまで調べているのですね。結論から申し上げると、算定基礎のやり直しになります。これに関しては、日本年金機構のホームページには掲載されていないようですので、私が独自で調べたところ、機構内部には「遡及して報酬の一部(手当)が無くなった場合の標準報酬月額の取り扱いについて」という疑義照会(回答)文書が出されているようです。
宮田部長:
なんか、大熊先生、マニアックですね。
大熊社労士:
あはは。そうかも知れませんね。まぁ、専門家ですからね!それでこの文書を確認すると、御社で発生した事案と同じように扶養手当が誤って支給されていたという例に関する記載がされています。それを確認すると「本来適正に届出されるべきものが、単に誤っていたものである」場合には「算定基礎届等の訂正を行うことが必要である」としています。つまり、御社でも算定基礎をやり直す必要があるということですね。
福島さん:
そうですか!家族手当は遡及されて減額されるのに、保険料は高いままではかわいそうと思っていたので、私まで嬉しく感じます!それに月額変更で考えると、たぶん、2等級は下がらないため、結局該当せずとなってしまいそうで申し訳なく思っていました。
宮田部長:
そこまで調べてくれていたのか!?私のミスなのに申し訳ないね。ありがとう。
福島さん:
いえいえ、仕事の一つですから!それでは早速、算定基礎のやり直し手続きをしますね。
大熊社労士:
はい、よろしくお願いします。
福島さん:
大熊先生、ありがとうございました!そして、宮田部長、長い間不在にしたにも関わらず、またこの場に戻してくださり、ありがとうございました。これからも私、がんばります!
宮田部長:
私の方こそ
、戻ってきてくれて、ありがとうというべきだよ。これからもよろしく頼むよ!
>>>to be continued
[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
こんにちは、大熊です。いよいよ福島さんが復帰をしました。近年、育児休業から復帰する女性も多くなってきましたね。さて、今回の内容に関して補足をしておきましょう。今回は給与計算ミスでの取り扱いでしたが、降給が遡って発令した場合の取り扱いについては、福島さんが日本年金機構のホームページから案内していた取り扱いになります。つまり、差額が支給された月を固定的賃金の変動があった月とすることになります。取り扱いには十分ご注意ください。
参考リンク
日本年金機構「月額変更届の提出」
http://www.nenkin.go.jp/n/www/service/detail.jsp?id=2054
(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/
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