今年の年末調整では国民年金保険料の2年前納をした人に要注意!

 大熊は、11月初旬に発表された年末調整に関わる国民年金保険料の取扱いについて説明しようと、服部印刷を訪れた。


大熊社労士:
 こんにちは。いよいよ年末調整の作業も大詰めですよね?
福島照美福島さん:
 はい。従業員からの申告書もすべて集まり、チェックを進めている段階です。毎年感じるのですが、年末調整の申告は複雑ですね。
大熊社労士:
 そうですね。それで今日は、その年末調整でお伝えしなければならないことがあるのです。
宮田部長:
 また、何か変更があったとかじゃないですよね~?
大熊社労士:
 ドキッ。どうしてわかったのですか?(笑)
宮田部長:
 え?え?え~!!!!
大熊社労士:
 (笑) 実は、国民年金保険料の取扱いで変更というか・・・取扱いの明示があったのです。御社で対象となる方は少ないとは思うのですが、説明しておきましょうね。
福島さん:
 私がザッと見た感じですと、国民年金保険料の申告をしていた従業員は、2~3名でした。日本年金機構から送られてきた証明書もきちんと添付されていましたよ。
大熊社労士:
 そうですか、その情報があると、話が進めやすいですね。ありがとうございます。さて、説明しようと思っていた内容ですが、対象になるのは、平成26年中に国民年金保険料を支払った人で「2年前納」という制度を利用した人になります。
宮田部長:
 2年前納?
大熊社労士:
 はい。2年前納というのは、平成26年4月から始まった国民年金保険料の納付方法で、2年度分の保険料を口座振替でまとめて納めるという制度です。この制度を利用すると、2年間で14,000円程度の割引になるため、お得なんですよ。
宮田部長:
 そうか、国はなるべく納付率を上げようとしているということですね。14,000円となると結構大きいですね。
大熊社労士大熊社労士:
 そうですね。さて、2年前納のイメージを持っていただけたので、この制度が年末調整に影響する点について話を進めましょうか。2年度分を先に払うので、一般的に考えれば、年末調整で適用できる社会保険料控除は、今年ということになりますよね?
福島さん:
 そうですね。
大熊社労士:
 ところが日本年金機構からの発表によると、なんと選択ができることになっているのです。選択というのは、①全額を納めた年に控除するか、②各年分の保険料に相当する額を各年に控除するか、の2つからになります。
宮田部長:
 個人が選択できるというのはすごいですね。ね、福島さん。
福島さん:
 確かになんとなく斬新な感じがしますね。う~ん、2年前納だから②の各年を選択すると、納付した保険料の半分を今年の社会保険料控除として取扱えばいいのでしょうか?
大熊社労士:
 本当はそのように考えたいのですが、実は2年前納が「2年度分」の前納のために、平成26年4月に納付したものは、平成26年が9ヶ月分、平成27年が12ヶ月分、平成28年が3ヶ月分となるのです。
宮田部長:
 え~!3年間も覚えておかないとダメだなんて…。
福島さん:
 宮田部長の深い嘆きは置いておいて、2年前納をした人には①用もしくは②用の証明書が送られてくるのですか?なんとなく流れがわからないイメージです。
大熊社労士:
 よい質問ですね。それがややこしくて、今年の証明書は2年前納をしたというものを利用することになります。手元に届いているものですね。そして、これに加えて申告者本人が「社会保険料(国民年金保険料)控除額内訳明細書」というものを作ることになります。この明細書は日本年金機構のホームページからダウンロードできるのでご確認くださいね。
福島さん:
 この明細書の記入も大変そうですね。
大熊社労士:
 そうですね。総務担当者泣かせですね。整理をすると、①を選択した人は、送付されてきた証明書のみを添付し、全額を社会保険料控除として記入する。②を選択した人は、送付されてきた証明書と明細書を添付し、平成26年分の保険料のみを社会保険料控除として記入する。こういうことになりますね。
宮田部長宮田部長:
 なるほど。ただ、全員に周知する必要もないだろうから、福島さん、2~3人だったっけ?対象者に連絡することにしようか。
福島さん:
 そうですね。私が見た限りでは2年前納した従業員はいませんでしたが、再度確認して必要であれば連絡することにしますね。大熊先生、ありがとうございました。

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス
 こんにちは、大熊です。今年はマイカー通勤者等の通勤手当の非課税枠拡大に始まり、改正や取扱いの明示がばたばたした感がありますね。この2年前納ですが、②を選択した場合、平成27年・平成28年に申告者本人が各年について年金事務所に証明書発行依頼をかける必要がありますので、ご注意ください。


関連blog記事
2014年11月11日「[年末調整]国民年金保険料2年前納で各年に社会保険料控除を受ける場合の留意点」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/52055481.html
2014年11月10日「[年末調整]国民年金保険料を2年前納した場合の社会保険料控除取扱い」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/52055480.html

参考リンク
日本年金機構「平成26年に国民年金保険料を2年前納した場合の社会保険料控除について」
http://www.nenkin.go.jp/n/www/info/detail.jsp?id=28306
日本年金機構「Q.2年前納した保険料の社会保険料控除はどのような方法で行うのか。」
http://www.nenkin.go.jp/n/www/faq/detail.jsp?id=28310&faq_genre=195
国税庁「2年前納された国民年金保険料の社会保険料控除について」
https://www.nta.go.jp/gensen/nenkin_zennou/index.htm

(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/

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