来年度から傷病手当金・出産手当金の日額の計算方法が変わります

 大熊は今日は来年度の社会保険の改正点の説明ということで服部印刷に向かった。
前回のブログ記事はこちら
2015年8月10日「来年度より社会保険の標準報酬月額の等級が増えることになっています」
https://roumu.com/archives/65716022.html


大熊社労士:
 こんにちは。今日も来年度の社会保険の改正点について説明するのでしたよね。
福島さん:
 ちょうど、傷病手当金の書類を書いていたところで、来年度はこの様式も変わるのかなぁ、なんて見ていたところでした。
宮田部長:
 あれ?何でしたっけ?傷病手当金の支給額が変更になるんでしたっけ?
福島照美福島さん:
 も~!宮田部長、しっかりしてくださいよ。改正点が2点あり、今日は、その2点目の傷病手当金や出産手当金を計算する際の日額の変更について説明していただくことになっていたんですよ。まぁ、結果的には支給額が変わるってことになるんでしょうけど、なんだか、傷病手当金や出産手当金の支給率が変わるみたいなイメージを抱いてしまうじゃないですか。
大熊社労士:
 まぁまぁ。傷病手当金等の支給率は現行、1日につき被保険者本人の標準報酬日額の3分の2に相当する額ですよね。まぁ、7割弱ですね。この7割弱の部分は変わらないのですが、「被保険者本人の標準報酬日額」の部分が変更になります。
福島さん:
 いまは病気や出産で休むときの標準報酬月額を30日で割って出すのでしたよね?
大熊社労士大熊社労士:
 そうです。ただ、そうなると、病気や出産の前に標準報酬月額が高ければ、傷病手当金等の金額も高くなる。・・・たまたま高くなったのであればよいのですが、悪用して休む前に標準報酬月額を高くするようなケースもあったようなのです。もちろん、法律どおりの計算ですので、問題ないのかもしれませんが、見方によっては不正受給に近いようなイメージになりますよね。
宮田部長:
 確かに法律どおりであれば、不正ではないのかも知れないけど、なんだかずるい感じがしますね。あ、それで法改正なのですね。
大熊社労士:
 そうです。改正された後の内容は、基本的に1年間の平均を取る方法となります。もう少し正確にお伝えすると「支給を始める日の属する月以前の直近の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2に相当する額」です。
福島さん:
 今日から支給されるとなると、平成26年9月から平成27年8月の平均ということになるのですね。
大熊社労士:
 そうですね。
宮田部長宮田部長:
 ん?でも、福島さんが書こうとしていた傷病手当金の書類って、確か今年の4月に入社した従業員じゃなかったっけ?そうなると、ん?4月から8月の平均で出すのですか?
大熊社労士:
 鋭い質問ですね。確かにそういうこともありますので、基本は先ほどお話した方法で計算し、今のケースのようにさかのぼって12ヶ月間もないよ、という場合には、別の方法で計算することとなります。
宮田部長:
 なるほど。それでどのような方法なのですか?
大熊社労士:
 はい。まずは、12ヶ月未満の月でも、その平均を出すことになります。先ほどの例ですと、4月から8月の平均ですね。ただ、それだけではなく、今出したものと、前年度の9月30日の全被保険者の標準報酬月額の平均を比べることとなります。任意継続被保険者の標準報酬月額を決める際のものと同じですよね。
福島さん:
 そうですね。
大熊社労士:
 この2つを比べて、いずれか少ない額の3分の2に相当する額が支給されることになります。【少ない額】というのがポイントかも知れませんね。
福島さん:
 確かにそうですね。なんだか、休む従業員の皆さんに説明するのがとても難しくなりそうです。
大熊社労士:
 そうですね。特に標準報酬月額が高い人で、12ヶ月未満のケースは傷病手当金等の額が低くなる可能性があるので説明は丁寧にしておいた方が良さそうですね。
福島さん:
 注意することにしますね。
大熊社労士:
 ちなみに傷病手当金等の様式ですが、現状は標準報酬月額を記載する欄もないですし、この改正での変更はないかと個人的には思っています。ただ、どうなるか分からないので、変更があった際にはご連絡しますね。
福島さん:
 よろしくお願いします。

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス
 こんにちは、大熊です。従業員にとって、傷病手当金や出産手当金を受給する機会は多くありません。ただし、いずれにしても休業に対する補填であり、受給する本人にとってはとても大切なものとなります。計算方法をきちんと説明し、書類を書いてもらうようにしましょう。


参考リンク
厚生労働省「持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律について」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000087166.html

(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/

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