雇用保険のマイナンバーの届出は努力義務から義務になりました

 今年の顧問先への訪問も今日が最後ということで、大熊は張り切って服部印刷に向かった。


宮田部長宮田部長:
 大熊先生、年の瀬にお越しいただきましてありがとうございます。1年が経つのは早いものですね。
大熊社労士:
 本当ですね。今年も残りわずかになりましたね。安心して新年を迎えましょうといいたいところなのですが、個人番号(マイナンバー)の取扱いについて最後の最後で大きな変更がありました。
服部社長:
 マイナンバーは施行直前まで本当にゴタゴタしているイメージがありますね。それで今度はどんなことが変更になったのですか?
大熊社労士:
 はい。これまで雇用保険の届出に記載するマイナンバーは、記載自体が「努力義務」だったのですが、これが「義務」となりました。
宮田部長:
 え!これまでは努力義務だったのですか!?
大熊社労士:
 はい、実はそうだったのです。厚生労働省が公開した資料を確認すると、「雇用保険手続について、個人番号をハローワークに届け出る法的根拠を、番号法に基づく努力義務としていた整理を、雇用保険法令に基づく義務と整理し直しました」という表現がなされています。
服部社長:
 私もてっきり、当初から義務だと思っていました。
福島さん:
 義務ということは必ず書かなければならないということになったのですか?
大熊社労士大熊社労士:
 するどい質問ですね。もちろん義務ですので、必須の記載事項にはなりますが、届出等の届出期限までに、何らかの理由でマイナンバーを取得できなかった場合には、個人番号欄を空欄で提出することも認められています。ただし、、別途、「個人番号登録・変更届出書」という新たに作られた様式でマイナンバーを届け出ることになります。手続きには届出期限もあるので、このような取扱いにしているのでしょうね。
福島さん:
 ということは、個人番号欄が空欄でも、ハローワークに届出を提出ができるということですね。
大熊社労士:
 結論としてはそうなります。マイナンバーの記載がないことで、ハローワークが雇用保険手続の届出を受理しないということはないとしているので、空欄でも受理してくれることになっています。
宮田部長:
 じゃぁ、面倒だし、情報漏えいも怖いのでうちの会社はマイナンバーを一切記載しないで行こう!とかいうのも可能なのですか?
大熊社労士:
 可能かどうかというと、(少なくとも当面は)手続き上は可能にはなるのでしょうね。ただ、それは正しくない処理ですよね。ここで想定しているのは、例えば、通知カードを紛失したために、マイナンバーが記載された住民票の写し(住民票記載事項証明書)を手配しているのだけれども、その到着が遅れていて、雇用保険の提出期限に間に合わない、というような事案を想定しているでしょうから。
服部社長:
 そもそもは義務であり、マイナンバーが普及して様々な場面で利用され、利便性が上がってくることも想像すれば、マイナンバーをいまからきちんと届け出ておくことも重要になってくるのでしょうね。手間を惜しんでいる場面ではないのでしょう。
大熊社労士:
 おっしゃるとおりです。もうひとつの想定が、従業員がマイナンバーの提供を拒否することです。拒否されたらそもそもマイナンバーを会社が知ることはできません。そのときには個人番号欄を空欄で届出することになるでしょう。
福島照美福島さん:
 確かに、以前、マイナンバーの説明をしたところ、「何だかよく分からないから、会社には出したくないよ」という従業員の方がいました。彼はそこまで強固に提供を拒否したりしないと思うのですが、今後、強固に拒否する人も出てくるかも知れません。
大熊社労士:
 そうですね。その点に関しては、「雇用保険手続の届出に当たって個人番号を記載することは、事業主においては法令で定められた義務であることをご理解いただいた上で、従業員から個人番号の提供を求めることとなりますが、仮に提供を拒否された場合には、個人番号欄を空欄の状態で雇用保険手続の届出をしていただくこととなります」としています。まずはきちんと説明をして提供をするように伝えることが重要ですね。
服部社長服部社長:
 そうですね。まだ、マイナンバーを提供することの具体的なメリット・デメリットが説明できないので、「法律で決まっているから」という説明にはなってしまいがちですが、それでも説明は重要になりますね。
福島さん:
 仮にそのような従業員の方が出てきた場合、説明はするにしても、私の方で何かやっておくことはありますか?
大熊社労士:
 そうですねぇ…。できれば、説明した記録を残しておいてもらえるとよいかとは思います。例えば、入社前の説明にマイナンバーの提供
のことが記載されていて、入社時の説明で説明し拒否をされた。その後、届出をする際にも、説明をし、拒否をされた。新しくできた雇用保険の被保険者証を渡すときにも説明したが、拒否をされたといった具合ですね。
服部社長:
 なるほど、会社にも手続きをする際に届出する義務があるので、その義務を果たそうとしたことを明確にしておくということですね。
大熊社労士:
 はい、そうですね。お手間をおかけしますがよろしくお願いします。

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
大熊社労士のワンポイントアドバイス
 こんにちは、大熊です。今回説明した取扱いは、2015年12月18日に厚生労働省から発表されました。この他にも雇用保険の継続給付の取扱いに変更が行われていますので、次回はそれを説明することにしましょう。


関連blog記事
2015年12月21日「雇用保険手続きにおけるマイナンバーの届出が義務化 厚労省Q&Aを改定」
http://blog.livedoor.jp/roumucom/archives/52092555.html
2015年12月22日「平成28年1月から、雇用保険の届出にマイナンバーの記載が必要です(簡略版)」
http://blog.livedoor.jp/leafletbank/archives/51388660.html
2015年12月21日「平成28年1月から、雇用保険の届出にマイナンバーの記載が必要です」
http://blog.livedoor.jp/leafletbank/archives/51388656.html

参考リンク
厚生労働省「マイナンバー制度(雇用保険関係)」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000087941.html

(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/

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