障害者雇用の対象者の確認はどのようにすればよいのですか?
中央省庁の障害者雇用の水増しが問題となっている。今日の面談でも早速この話が話題となった。
宮田部長:
大熊先生、今朝の新聞にも大きく取り上げられていましたけど、中央省庁の障害者雇用の水増しの話。あれはひどいですよね。我々中小企業でも必死になって障害者雇用を進めているのに、お上があれではねぇ。
大熊社労士:
そうですね。このニュースにはさすがに驚きましたね。
福島さん:
私も新聞で読みましたけど、中央省庁で雇用している7,000人弱の障害者のうち、3,000人以上が法律が求める障害者の要件を満たしていなかったそうですよ。約半分ですからね。
大熊社労士:
そうですね。私もその記事を読みました。今後、ハローワークが企業に障害者雇用の指導をする際に、事業主からいろいろと文句を言われるケースも出てくるのでしょうね。そう考えるとハローワークの障害者雇用の担当者の方も苦労することになりそうです。
福島さん:
先生、本当に基本的なことになるかも知れませんが、そもそも法律が求める障害者の要件というのはどうなっているのでしょうか?手帳を所持している人といった感じで理解しているのですが。
大熊社労士:
はい、概ねその理解で問題ありません。それでは障害種別に障害者雇用促進法の対象となる障害者の確認方法についてお話したいと思います。まず「身体障害者」の場合は、地方自治体から交付される身体障害者手帳において定められる障害程度が1級~6級および7級の障害を重複している人が障害者として障害者雇用率の算定対象となります。
福島さん:
7級の場合は障害が重複していないといけないのですね。それは知りませんでした。
大熊社労士:
そして、「知的障害者」の場合は、地方自治体から交付される療育手帳、「精神障害者」の場合は、精神障害者保健福祉手帳の所持者が対象となります。ちなみに高次脳機能障害と発達障害については、いずれも精神障害者保健福祉手帳の交付対象となっていますので、そのようなケースであっても手帳所持者であれば障害者雇用の対象に含めることができます。
宮田部長:
なるほど。ということはポイントとなるのは、福島さんが話していたように手帳ということになるのですね。
大熊社労士:
はい、そのとおりです。障害者として雇用する際には、応募時に手帳の所持の有無を把握し、障害者雇用率の算定対象であることを確認することが重要です。
福島さん:
ありがとうございました。よく分かりました。ちなみに今回の水増し問題の影響は、今後出てきそうですか?
大熊社労士:
まだこの問題の全体像は把握できていないようですが、既に地方自治体などでも水増しの事例が発覚し始めているようです。全国で見ると、すごい人数になるのかも知れませんね。ということはそうした水増しをしている官公庁は今後、追加での障害者雇用を行わざるを得なくなるでしょうから、結果的には民間企業での障害者の雇用が更に難しくなることが予想されます。
福島さん:
それは大変!今後、法定雇用率は2.3%に引き上げられることで障害者雇用ニーズが高まり、その採用が難しくなるなぁと思っていましたが、それに加えてこの状況ということですね。
大熊社労士:
そうですね・
宮田部長:
となると早めに障害者雇用の対策を進めることが重要になりそうですね。福島さん、今後も積極的に求人活動を続けましょう。
>>>to be continued
[大熊社労士のワンポイントアドバイス]
こんにちは、大熊です。今回は中央省庁で発覚した障害者雇用の水増し問題から、障害者雇用促進法が求める障害者の範囲について取り上げました。障害者の法定雇用率は今春、2.2%に引き上げられましたが、今後も更なる引き上げが予定されています。特に障害者雇用がゼロの企業についてはハローワークの指導が強化されるという方針も示されていますので、早めの対応をお勧めします。
参考リンク
厚生労働省「障害者の雇用」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/jigyounushi/page10.html
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「障害者の雇用支援」
http://www.jeed.or.jp/disability/index.html
(大津章敬)
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