副業・兼業解禁という方向でモデル就業規則が改定されたのですね

 11月後半となり、2018年は人事労務管理において大きな変革の1年だったなと思いながら大熊は服部印刷の門をくぐった。


大熊社労士:
 こんにちは。今年も残り1ヶ月半を切り、何となく気ぜわしい季節になりましたね。
宮田部長:
 ハロウィンが終わると街の飾りがクリスマスになり、一気に年末の感じになりますね。
大熊社労士大熊社労士:
 私も今年、何があったかなぁと振り返っていて、もちろん、働き方改革関連法が成立して色々大変だったのですが、そういえば法律以外でご説明していなかったことがあったと思い出しました。
宮田部長:
 そうですか。どのようなことですか。
大熊社労士:
 ええ、以前お話をしたことのある副業・兼業についてです。以前お話したときには今後、ガイドラインが策定されて厚生労働省のモデル就業規則が改定されるとお伝えしましたが、実は今年1月に両方とも公開されています。
服部社長:
 そうでしたか。
大熊社労士:
 ガイドラインでは、ガイドラインでは副業・兼業にまつわる事項が整理されており、「「副業・兼業の促進に関するガイドライン」Q&A」も公開されて細かな点まで記載されています。そして、注目すべきものが就業規則であり、当然ながら大きな方針転換となりました。
福島さん:
 どのように変わったのですか?
大熊社労士:
 はい。具体的には以下のようになっており、1項で「できる」という表現を用いて積極的に副業・兼業を認めるような規定となりました。

———-【厚生労働省公開のモデル就業規則(抜粋)】———-
(副業・兼業)
第67条 労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。
2 労働者は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行うものとする。
3 第1項の業務に従事することにより、次の各号のいずれかに該当する場合には、会社は、これを禁止又は制限することができる。
(1)労務提供上の支障がある場合
(2)企業秘密が漏洩する場合
(3)会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
(4)競業により、企業の利益を害する場合
—————————————————————–
宮田部長宮田部長:
 よく考えたらすごい転換ですよね。確か前は許可を受けずにやったら懲戒だよ!みたいな規定でしたよね。
大熊社労士:
 はい、そうです。もちろん、必ずこの規定にしなければならないわけではありません。実際に従業員が副業・兼業を行ったときに争いになる可能性はあるものの、副業・兼業が実態に合わないという会社は、これまでどおり禁止するという規定も考えられます。
宮田部長:
 そっか、モデルはあくまでもモデルだからこれにとらわれる必要はないということですね。
大熊社労士:
 そうです。まぁ社会環境を考えると、例えば正社員は副業・兼業の内容を精査した上での許可制、所定労働時間や所定労働日数が少ないパートタイマーやアルバイトは原則として届出制とすることなどが考えられますよね。
福島照美福島さん:
 確かにパートさんはこれまで特に届出をしてもらうようなことはしていませんでしたが、臨時的に2箇所以上で働いている人もいるかと思います。
大熊社労士:
 そうですね。今後はそのような状況を何も管理せずに放置して問題となる可能性もあります。
服部社長服部社長:
 なるほど、時代は変わっているように思いますね。大熊さんの言うようにうちでもしっかりと運用できる許可制に変更を検討しようと思います。
大熊社労士:
 そうですね。その際には、先ほどの規定の第3項が参考になります。何もやみくもに認めなさいといっているわけではなく、(1)労務提供上の支障がある場合、(2)企業秘密が漏洩する場合、(3)会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合、(4)競業により、企業の利益を害する場合のような理
由があれば、当然、認められないという会社の判断がなされることになります。
服部社長:
 うちで問題となることを挙げて、考えることになりますね。
大熊社労士:
 そうですね。あとは、副業・兼業をするということはある程度、自分で働き方を制御することが求められると思いますので、例えば勤続年数5年以下の従業員は認めないことを原則的な取扱いとすることも考えられるでしょう。
服部社長:
 法令で副業・兼業を認めなければならないとなったわけではないのである程度、柔軟に考えることができるというわけですね。
大熊社労士:
 そうですね。まずは副業・兼業に対して、従業員の方がどのように考えているのかも含め、制度を設計することがよいのではないかと思っています。
福島さん:
 一度、雑談程度に従業員がどのように考えているか聞いてみることにします。
宮田部長:
 そうだね、それで色々検討していきたいね。よろしくね。

>>>to be continued

[大熊社労士のワンポイントアドバイス]

大熊社労士のワンポイントアドバイス こんにちは、大熊です。副業・兼業は法令で認めなければならない・認めなくてもよい、という規定のない制度です。したがって自由に設定できるのですが、厚生労働省の「 「副業・兼業の促進に関するガイドライン」パンフレット」では会社が敗訴となった裁判例も多く取り上げられているように画一的に禁止ということは難しい時代になってきています。今後は従業員がどのような副業・兼業を希望しているのかを聞いた上で判断する必要が出てくるのでしょう。


関連blog記事
2017年10月2日「今後、副業・兼業が当たり前になる時代に向かっていきます」
https://roumu.com/archives/65785914.html

参考リンク
厚生労働省「副業・兼業」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000192188.html

(宮武貴美)
http://blog.livedoor.jp/miyataketakami/

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