労基署による不払い残業代の是正指導 前年比72%減の約125億円

 先月、厚生労働省は「監督指導による賃金不払残業の是正結果(平成30年度)」を公表しました。これは全国の労働基準監督署が賃金不払残業に関する労働者からの申告や各種情報に基づき企業への監督指導を行った結果、平成30年4月から平成31年3月までの間に不払いになっていた割増賃金が支払われたもののうち、その支払額が1企業で合計100万円以上となった事案の状況を取りまとめましたものになります。その結果は以下のとおりとなっています。
是正企業数   1,768企業(前年度比 102企業の減)
支払われた割増賃金合計額  125億6,381万円(同 320億7,814万円の減)
対象労働者数  118,837人(同 89,398人の減)
支払われた割増賃金の平均額 1企業当たり711万円、労働者1人当たり11万円

 昨年度が異常値だったとはいえ、グラフを見れば分かるとおり、「支払われた割増賃金合計額」は大幅減少に転じ、これを業種別に見てみると、企業数がもっとも多いのはその他の事業368企業(同20.9%)、製造業332企業(同18.8%)、商業319企業(全体の18.0%)、保健衛生業230企業(同13.0%)の順となっています。

 またこの資料の中では賃金不払残業の解消のための取組事例が4つ紹介されているのですが、、以下では木材・木製品製造業の事例をとり上げましょう。
【賃金不払残業の状況】
・割増賃金が月10時間までしか支払われないとの労働者からの情報を基に、労基署が立入調査を実施。
・会社は、自己申告(労働者による労働時間管理表への手書き)により労働時間を管理していたが、自己申告の時間外労働の実績は最大月10時間となっており、自己申告の記録とパソコンのログ記録や金庫の開閉記録とのかい離が認められたことから、賃金不払残業の疑いが認められたため、労働時間の実態調査を行うよう指導。
【企業が実施した解消策】
・会社は、パソコンのログ記録や金庫の開閉記録などを基に労働時間の実態調査を行った上で、不払となっていた割増賃金を支払った。
・賃金不払残業の解消のために次の取組を実施した。
支店長会議において、経営陣から各支店長に対し、労働時間管理に関する不適切な現状及びコンプライアンスの重要性を説明し、労働時間管理の重要性について認識を共有した。
労働時間の適正管理を徹底するため、自己申告による労働時間管理を見直し、ICカードの客観的な記録による管理とした。
ICカードにより終業時刻の記録を行った後に業務に従事していないかを確認するため、本店による抜き打ち監査を定期的に実施することとした。

 こういった事例は行政が企業に求めていることであると理解することが重要です。自己申告により労働時間管理をしている企業においては、この事例のように、ICカードの導入を検討したり、パソコンのログ記録とのかい離がないか確認し、乖離があった場合はその理由を確認するなどの仕組みを導入するなどして、対策を行いましょう。


参考リンク
厚生労働省「監督指導による賃金不払残業の是正結果(平成30年度)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_06128.html

(福間みゆき