始業・終業時刻を自己申告で行っている場合に必要となる実態調査

 先日、厚生労働省は長時間労働が疑われる事業場に対する、平成30年度の監督指導結果を公表しました。これは、平成30年度に長時間労働が疑われる事業場に対して、労働基準監督署が実施した監督指導の結果が取りまとめられたものです。
 対象となる事業所は、各種情報から時間外・休日労働時間数が1ヶ月当たり80時間を超えていると考えられる事業場や、長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場であり、29,097事業場のうち、11,766事業場(40.4%)で違法な時間外労働が確認されています。
 指導内容は様々ですが、そのうちのひとつ「労働時間の適正な把握に関する指導状況」を確認すると、4,752の指導事業場数のうち、始業・終業時刻の確認・記録ができていないことで指導が行われたものが2,688事業場、自己申告制による場合で指導が行われたものが2,694事業場ありました。
 自己申告制による場合では、自己申告制により始業・終業時刻の確認および記録を行っている場合で、「自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること。」や「自己申告した労働時間を超えて事業場内にいる時間について、その理由等を労働者に報告させる場合には、当該報告が適正に行われているかについて確認すること。」が適正に行われていないということで、実態調査の実施をするように指導されたものが2,154事業場を占めています。
 労働時間の適正な把握に関する指導は、2017年1月20日に策定された「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に基づいて行われたものが中心となっており、自己申告制によるものでは、「入退場記録やパソコンの使用時間の記録など、事業場内にいた時間の分かるデータを有している場合に、労働者からの自己申告により把握した労働時間と当該データで分かった事業場内にいた時間との間に著しい乖離が生じているときには、実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること。」や「休憩や自主的な研修、教育訓練、学習等であるため労働時間ではないと報告されていても、実際には、使用者の指示により業務に従事しているなど使用者の指揮命令下に置かれていたと認められる時間については、労働時間として扱わなければならないこと。」が明示されています。自己申告制により労働時間を把握している事業場では、改めてこのガイドラインに沿った管理ができているかを確認したいものです。


参考リンク
厚生労働省「長時間労働が疑われる事業場に対する平成30年度の監督指導結果を公表します」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_06801.html
厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/070614-2.html
(宮武貴美)