これが中国の人事制度だ! 第1回「仕事中心に考える職務給制度“3つ”の組合せで制度構築を」

中国の人事管理上、機能的、弾力的に運用できる人事制度は、「シングルレートによる基本給」「評価に応じて変動する業績給」「職務付加価値を反映させた職務給」の3つの組み合わせだ。この観点から、人事制度の見直しを行い、人材の市場性に合わせて運用ができる人事制度の構築を考えてみられてはいかがだろうか。

「職務」に重点を置いた人事制度

中国で日系企業の人事制度構築をお手伝いしながら常々、「中国に最も相応しい人事制度はどのようなデザインなのか」を考えているが、企業からの要望やその組織の現状を見るにつれ、いつも新しい発想や着眼を教えられる。どんなに立派な制度を作っても制度をブラッシュアップさせて運用管理を行わなければ、すぐに陳腐化するし、日本と違い制度の管理ができるスタッフのマンパワーが不足しているということも悩みどころだ。

日系企業の人事制度の特徴を挙げてみると、基本的に「職務」という考え方が強く、給与報酬の決定もこの「職務」なしでは考えられないと言えよう。日本の職能資格制度だと、能力の習熟に伴い、等級が上昇し、同時に基本給部分が上がっていくわけだが、「職務」を中心に考えた場合、「○○の仕事を担当しているから給与は××」という仕事に対する付加価値により給与が決定する。中国の人事管理上、この付加価値というのは「職務」を遂行できる人材の希少性、代替性、技能習熟に要する時間的条件、組織戦略上の重要度等の要素が考えられる。

従って、これらの条件要素や「職務」を中心とした給与報酬体系を考慮せずに人事制度を作ると、特に高い付加価値を求める人材を採用しようと思っても現行の賃金テーブルに載って来ないとか、希少価値の高い従業員の外部流出を招くなど、人材確保の面で大変な苦労をすることになる。

シングルレートの基本給制度が最適

これまで私は様々なパターンで基本給制度を設計してきたが、最もしっくり来るのはひとつの等級に対する基本給は一本という、「シングルレートの基本給制度」だ。日本の職能資格では昇給に伴って基本給自体が上昇していくが、中国の情況に合った基本給制度というのはベースアップ(CPI)や昇格以外の要件では基本給は上昇しないという仕組みだと思う。これは中国的な「同一労働、同一賃金」の考え方と一致している。従業員からも「同じ等級なのに、なぜ基本給が違うのか」という疑問の声をよく耳にする。

もうひとつ重要なのが、従業員の評価の結果を給与のどこで吸収させるかということ。これは、「業績給」という給与の構成部分が当たる。「業績給」は等級に応じて上限・下限の幅を持たせ、この幅の中で評価に連動させ、毎年業績給を決定していく。上位等級に昇格できず、「業績給」の上限に到達した場合には昇給はそこでストップ。後はベースアップのみということになる。

貴社でも「シングルレートによる基本給」「評価に応じて変動する業績給」「職務付加価値を反映させた職務給」の3つの組み合わせの観点から、人事制度の見直しを行い、人材の市場性に合わせて運用ができる人事制度の構築を考えてみられてはいかがだろうか。(清原学)

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