海外で業務中にけがをした場合、労災保険は適用されるか
【質問】
当社の社員が海外の工場を視察中にけがをしました。このような場合、労災保険は適用されるのでしょうか。
【回答】
海外で業務中にけがをした場合、「海外出張」であるか、「海外派遣」であるかによって、労災保険が適用されるかが判断されます。労災保険上では「海外出張」に該当すれば労災保険が適用され、「海外派遣」の場合には、原則として労災保険は適用されません。
一般的に「海外出張」と「海外派遣」を例示すると、以下のようになります。
(特別加入制度のしおり:厚生労働省より)
行政通達(昭和52年3月30日基発192)によると、「単に労働の提供の場が海外にあるにすぎず、国内の事業場に所属して、当該事業場の使用者の指揮に従って勤務するのか、海外の事業場に所属して、当該事業場の使用者の指揮に従って勤務することになるのかという点から、その勤務の実態を総合的に勘案して判定されるべきものである」としています。
したがって、まずは当該社員が国内または海外のどちらの事業場に所属し、指揮命令を受けて勤務しているのかを確認する必要があります。国内の事業場に所属し指揮命令を受けていれば、「海外出張」に該当し、労災保険が適用されることになります。もし海外の事業場に所属し指揮命令を受けている「海外派遣」であっても、事前に労災保険の「特別加入」の手続きをすることによって、国内の労災保険を適用させることが可能になります。
特別加入の具体的な手続きとしては、まず「特別加入申請書」を派遣元事業場の所在地を管轄する労働基準監督署を経由して、都道府県労働局長へ提出し、その承認を受けます。
その後、現実に派遣先の事業に従事することになった時点で「海外派遣に関する報告書」を遅滞なく提出する必要があります。(佐藤浩子)
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