海外赴任規程の整備と運用 第1回「海外赴任者にはどの国の法律が適用されるか」

近年、円高等の背景により中小企業を中心に海外に進出するケースが急増しており、伴って海外勤務にあたってのルールを整備しなければならないという相談が当社にも多く寄せられるようになりました。そこで、今回からは、シリーズにて、海外赴任規程を作成する際の視点や注意点をお伝え致します。

1.海外赴任者にはどの国の法律が適用されるか

海外赴任者の労働契約関係においては、その労働者・労働契約について、日本の法律と赴任国の法律のどちらが適用されるのか、という問題が生じます。この問題について考えるに当たっては、まず日本国内で働く外国人労働者のケースを確認しておくと理解が早まりますので、まずはそちらを解説後、日本人の海外赴任者について解説を致します。

2.日本国内で働く外国人労働者の場合

 日本国内で働く外国人労働者・労働契約については、基本的には就業場所である日本の法律が適用されます。そのため、日本の強行法規(つまり、労働契約の最低基準が示されている労働基準法や最低賃金法等)は、労働者保護の観点から、強制的に適用がされることになります。したがって、日本国内で働く外国人労働者(不法就労外国人も含む)に対しては、労働基準法等の日本の強行法規が適用されることを前提に、労働契約を結ぶことが必要となります。

3.海外赴任者の場合

それに対して、海外赴任者ついては、上述とは逆のことが起こります。すなわち、海外で働く日本人労働者には、原則として日本の労働基準法等は適用されませんが、その代わりに赴任国の強行法規が適用されることとなります。そのため、海外赴任者の労働条件を考える際には、現地の強行法規の適用があることを念頭に入れて、海外赴任規程や個別の契約書の作成を行なわなくてはなりません。

4.一時的な海外出張の場合

一方で、日本国内の事業場から海外へ派遣される者の中でも、海外での就労が一時的なものであって、国内事業との関係が継続していると認められる場合(例えば短期の出張の場合がこれに該当します。)には、日本国内で活動している際と同様に、赴任国ではなく日本の労働基準法等の適用がされます。(佐藤和之)

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