これが中国の人事制度だ!第4回「進出企業の人事制度『等級とモチベーション』」

日本国内の企業の多くが採用している「職能資格制度」は、一般的にゼネラリストを育成する制度としての特徴を持っています。従って、職能資格制度とセットになって運用されるのが「ジョブローテーション」です。職能資格制度の起源は日本の公務員の人事制度であり、公務員制度の場合、部局へ就任してから3年程度経過するとまた違うセクションへの異動を伴います。このようにジョブローテーションを繰り返しながら、多種多様な業務経験を積ませ、何でもできるゼネラリストを育てていくわけです。

 では、そもそも中国ではこのようなジョブローテーションが馴染むのでしょうか。答えはNoです。中国人従業員の場合、日本人に比べ、キャリア志向に対する非常に強いモチベーションを保有していますが、一方で専門性の習熟に対する高いモチベーションを持っている側面もあります。担当職務異動の打診をしても、「私はその仕事をするためにこの会社に入社したのではない」と平気で言ってきたりもします。

 中国でジョブローテーションが運用できないもうひとつの要因として、職務別の給与の差が大きいということがあります。日本の職能資格の場合、職務間の給与格差は大きくないので職務の異動は比較的スムースに行うことができ、それが職能資格の特徴でもあります。一方、中国では職務間の給与差が大きいため、異動の際にはそれが大きな障害となってしまいます。このように、中国人従業員のモチベーションの一端を紐解いてみても、日本式の人事管理の限界を垣間見ることができます。

 このようなことから推察すると、中国での等級管理は仕事を基軸とした職務等級制度によるものが主流であることが理解できます。

 また、中国の人事管理では本来、「崗位」という概念があります。これは正にジョブを表しており、「崗位」の定義がジョブディスクリプション(職務記述書)ということになります。このような特徴は、中国の人事管理が欧米企業のそれに非常に近いことを表しています。

 従業員の給与は全てこの「崗位」によって決定し、「崗位」が上昇、つまり昇格することで給与も同時に上がっていくという考え方です。日系企業の場合、長く職能資格制度に慣れてしまっているため、このように仕事の区分、グループに基準を置いて人事管理を行うということに制度的な抵抗感もあるようですが、まず組織、等級を設計していく上では、この仕事による等級、「崗位」による管理を念頭に置いて制度を設計していくことが、中国で人事管理を成功させるためには、極めて重要なポイントとなってくることを理解して下さい。(清原学)

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