中国人事管理の先を読む!第5回「進出企業の人事制度(2)『基本給の設計』」

給与を構成する要素のうち、中核を成すのが基本給です。今回は、基本給をどのように設計するのかについて紹介します。

 一般的に基本給には、「シングルレート」と「レンジ給」の2通りの決め方があります。
シングルレートとは、等級やポジションごとに1つの基本給のみを設定するものです。それに対してレンジ給とは、等級やポジションごとに基本給の上限と下限を設定するものです。つまり前者の場合、同じ等級やポジションであれば、年齢や経験の差に関係なく一定の給与額が支払われるのに対し、後者では同じ等級やポジションであっても年齢、経験、能力などによって基本給に格差が生じることになります。

【シングルレートによる基本給例】

等級S1の基本給 3000

等級S2の基本給 3500


 上記のとおり、各々の等級に基本給額が11で対応している基本給制度であるシングルレートは、人事制度の中でも、職務給制度に多く取り入れられているものです。この場合、基本給の上昇、即ち昇給は、昇格することで上位等級のレートの基本給まで上がることになり、昇格と昇給が同時に行われることになります。

 さらに、シングルレートの場合、等級定義の資格による昇格審査を厳格に実施したり、等級間の基本給額差が大き過ぎ、昇格に躊躇してしまうことで、昇給の運用が硬直化してしまいやすいことから、基本給以外に「業績給」を設け、昇格以外の評価によって給与を弾力的に運用するケースも多く見られます。

【レンジ給による基本給例】

等級S1の基本給 3000元~3500

等級S2の基本給 3500元~4000

各々の等級の基本給に一定の幅(レンジ)を持たせ、その範囲内で基本給を決定する制度であるレンジ給の場合、社員の評価によって基本給を弾力的に運用することができ、また中途採用等の初任給決定がレンジの中でできるため、シングルレートと比較すると、運用はしやすい制度です。レンジの中を更に細分化し、「号」を用いて基本給テーブルを作成するパターンと、とにかくレンジだけ決めておいて、その中で自由に基本給が決定できるようにしておくパターンの2通りがあります。しかし、給与の決定に対して比較的自由な裁量が与えられているため、逆に給与の決定に恣意的要素が加わったり、基本給の差に対する合理的な裏付けが無くなってしまうことの懸念が存在します。(清原学)

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