中国の「所得再分配政策」の公布が迫られる!
1966年から10年間続いた文化大革命以降、中国経済はすっかり疲弊してしまい、国民の生活は窮乏を強いられたわけですが、79年から始まった改革開放政策によって中国国内には外資による投資の呼び水として経済特区、経済技術開発区が作られ、イデオロギー的には共産主義でありながら自由経済を認める「社会主義市場経済」が導入されました。これと同時に、鄧小平の「先富論」によって経済の競争化が始まり、一部の資産階級や力のある者、技能者は次々と豊かになっていき、経済をベースにした国力は年々脅威的な発展を遂げる一方、「貧富の差」という非常に大きな社会問題を生むことになります。国民の所得分配の不公平を示すジニ係数(0から1までの係数で、1に近いほど所得格差を表す)は既に0.5を超えています(ちなみに日本は0.28)。
経済が成長していく一方で、このように所得配分が不公平になっていく中、豊かになれない国民には絶望感が蔓延し、それが次第に共産党政府に対する批判になり、過去の純粋な共産主義を目指した公平な時代への回帰思想が徐々に支持されるようになってきています。このような事態を重く見た中央政府は今年、「所得分配改革」に着手、来年早々には改革案の公布が見込まれています。
とはいえ、もともと所得の高い一部の者から貧しい者への分配などできるはずもなく、この所得配分改革の根幹は、①民間企業の業績給の規範化 ②企業の最低賃金の引き上げなど、企業に勤めるサラリーマンの賃上げという方向性しか見えてきません。結果的にこれら賃上げの原資を負担するのは民間企業ということになり、賃上げ以外にも社会保険料の引き上げや残業手当等手当の規範化が目論まれています。
社会主義国家でありながら貧富の差が年々大きくなっていく社会。GDPが日本を抜いて世界第2位に躍り出たわけですが、一人あたりのGDPを見ると日本の僅か10分の1しかありません。日本よりも資産を持つ国民も数多く現れて来ている中で、逆に、貧しい人は想像を絶するほど貧しいという現実があります。この現実が今の中国にはみられ、非常に根の深い深刻な問題であります。所得の再配分によって所得の均衡を図る一方で、もっと根幹にある社会保障などの充実や、所得の格差を生み出す不公平な社会システム自体に着手すべきではないのでしょうか。(清原学)
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