中国現地法人の従業員は直接雇用がよいのか、それとも間接雇用がよいのか

無題 中国では、会社と従業員との間で直接労働契約を締結する「直接雇用」と、労務派遣会社を通じて雇用する「間接雇用」とがあります。間接雇用が義務付けられている代表処(駐在員事務所)であれば、雇用方法を検討する余地がありませんが、それ以外の企業形態であれば、どちらの方法で従業員を雇用するかは企業の自由選択です。最近、「今までうちの従業員はすべて派遣会社を通じて雇用していたが、直接雇用にしようかと思っている」という相談が増えています。逆に、「直接雇用を間接雇用にしたい」という相談はほとんど耳にしません。直接雇用を間接雇用にすることは、まず従業員が納得しないでしょうが、会社の意向としても少ないようです。

 そもそも中国には派遣法自体がありません。また中国の労務派遣は、日本でいうところの労働者派遣とは若干意味合いが異なり、会社や従業員双方からみても、「派遣従業員」という意識はかなり薄いと思います。2008年の「中国労働契約法」の施行以前であれば、まだ派遣のメリットはあったのですが、同法の施行に伴い、派遣であっても簡単には交代させられなかったり、雇用に関する企業側のリスクが大きかったりで、あまりメリットが感じられる制度ではなくなってしまいました。そうした背景もあり、企業としては労務派遣から直接雇用に切り替えようとしているところが多くなっているのかと思います。

 しかしながら、企業としてはどちらの雇用を選択すべきかについて、それぞれのメリット・デメリットを整理しておく必要があります。直接雇用にすれば派遣会社へ支払う手数料が必要なくなるのですが、その分会社が負担する福利厚生費が増えたりしますので、検討段階では十分にリサーチしなければなりません。

 ただひとつ言えることは、現在の中国の法律上、労務派遣に関する唯一の根拠法である「中国労働契約法」については、2012年春の全国人民代表大会(日本の国会に相当)において、改正決議がありました。同法の何がどのように変わるのかは未だ明らかではありませんが、本来「労働の単純性、代替性」にのみ認められていた労務派遣ですが、実体はそうではないため、労務派遣の厳格な運用が義務付けられるとのことです。そうなれば、現在派遣で従業員を雇用している会社は派遣自体を見直さなければならないため、今から少しずつ検討を始めておくことは大切かと思われます。(清原学)

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