中国労働仲裁の仕組みと仲裁現場からみた企業が対応すべきポイント(2)

労働仲裁とは何か
 従業員が会社に対して何らかの不満を持っているとすると、それは、企業の従業員に対する法律上の保護義務が関係していることが多いです。例えば争議の原因でもっとも多い事由の一つに「労働契約の解除(解雇)」の問題があります。これについては、解雇自体が不当であるという問題や、仮に従業員と解雇の合意をしている場合でも経済補償金(※1)の支払いが問題となることがあります。いずれにせよ従業員が不服を申し出た場合、会社と従業員で話し合って解決できればよいのですが、当事者のみでは解決できなかったときには、従業員が会社を管轄している労働仲裁委員会に解決の申請を行うことがあります。

 労働仲裁委員会は労働局の外局です。いわゆる準司法という存在になります。日本の労働基準監督署の司法権をもっと強めたような機関です。従業員はこの労働仲裁委員会に対して、不服の事由や会社との話し合いの経緯、もしそれにまつわる証拠品があればそれも添付して仲裁申請を行います。この際、申請費用はほとんどかかりません。これが「ダメもと」で会社を訴え、仲裁件数を膨れ上がらせている原因の一つです。

 労働仲裁委員会では専門の仲裁委員が従業員からの申請書類を審査し、訴えに法律上の瑕疵(かし)(※2)がないと判断した場合には申請を受理します。申請が受理されると従業員本人、そして会社に仲裁審判の呼び出し通知が届きます。通知には、誰がどのような理由で仲裁申請をしたのか、仲裁の開催日時、開催場所といった内容が、細々と書かれています。これが届くと会社としては少々ドキっとするわけです。

 この仲裁の通知については、言われが無いと思われる場合であっても、無視をしてはなりません。会社側の担当者が指定された仲裁に赴かなければその時点で仲裁を拒否したこととなり、必然的に従業員の申請は100%認められてしまいます。よって、仲裁に対しては真摯に対応することが必要です。(清原学)

※1経済補償金…労働契約の解除、終了時に、法律により従業員への支払いが義務付けられているもの。勤続年数満1年ごとに1ヶ月分の賃金額を支払う必要がある(最大12年分)。
※2瑕疵…(法律上の)何らかの欠点や欠陥。必要な要件を欠いていること。

当ブログの記事の無断転載を固く禁じます。