中国労働仲裁の仕組みと仲裁現場からみた企業が対応すべきポイント(5)

企業内和解への道
 「中華人民共和国労働争議調停仲裁法」が施行されてから歳月が経ちましたが、この法律を受けて、2012年1月1日には、「企業労働紛争の協議調停に関する規定」が施行されました。これは簡単に言えば、労働仲裁申請を行う前にまず企業の中で話し合って解決する機能を持たせなさい、という法律です。仲裁委員会も2008年以降、これほどまでに労働仲裁への申請が増えるとは思ってもみなかったのでしょう。そこでまずは労使で話し合った上で、当事者のみではどうしても解決ができないものだけを仲裁に持って来なさい、というわけです。

 この法律は、「総則「協議」「調停」「附則」の4章からできているものですが、いくつか趣旨を列記しますと、次のとおりとなります。

①企業内部で労使双方が協議できる体制を構築すること。
 つまり、調停会議のようなものを会社の中に設置しなさいということです。
②企業は円満な労使関係を構築し、従業員の要請を伝えるルートを作って、従業員に対する配慮の強化を行うこと。
 これはそう思っていても、争議になるのですから仕方ありません。
③争議処理における労使双方による協議の原則、方法、参加者、期限及び協議の効力などについて規定すること。
 これは会社として一考の価値があります。
④企業内に労働争議調停委員会の設置を行うこと。
 これもこのような委員会を会社の中に作りなさいということです。
⑤まず紛争の防止体制を確立させること。
 これも当然のことです。会社としても好き好んで仲裁をしているわけではありません。
⑥労働争議調停協議に関する仲裁審査制度を確立させること。

 このように労働仲裁については労働仲裁委員会という公の機関、それ以前に会社組織において解決を図る労働争議調停委員会を設置して、とにかく円満に解決するよう指導されつつある状況です。当局も会社と従業員双方に対していい顔をしなければならないため、人情を考えると、立場的には苦しいことはわからないわけでもありません。今後、会社の経営状況や、賃上げなどによる従業員の経済状況の変化によっては、労働争議はさらに増える可能性があります。そうなったときには、当局からはまた新たな紛争解決の施策が講じられるかもしれません。(清原学)

当ブログの記事の無断転載を固く禁じます。