どうなる?2013年中国現地法人の労務管理~今年を予測する5つのポイント~第4回

  止まらない労働争議~労働裁判の現場から~

 前述したように、2008年1月の中国労働契約法施行以来、企業と従業員との間での労働争議は年を増すごとに、その件数が爆発的に増加してきています。それに伴って労働仲裁に預けられる審判件数も増加の一途を辿っています。

 従業員が企業に対して何らかの不満を持っている場合、そこには大抵、企業による法律上の従業員に対する保護義務が関係してきますが、例えば争議の原因でもっとも多い事由の一つに「労働契約の解除(解雇)」の問題があります。

 これについては、解雇自体が不当であるという問題や、仮に従業員と解雇の合意をしていても経済補償の問題が発生します。いずれにせよ、従業員が不服を申し出た場合に、企業と従業員だけで話し合って解決できればよいのですが、両者のみで解決できなかった場合には従業員から企業を管轄している労働仲裁委員会に解決の申請を行うことがあります。労働仲裁委員会は労働局の外局であり、いわゆる準司法という存在になります。従業員がこの労働仲裁委員会に不服の事由や企業との話し合いの経緯、もしそれにまつわる証拠品があればそれも添付して仲裁申請を行います。

 労働審判では最初から仲裁になるケースもありますが、大半は仲裁委員による和解発議となります。仲裁委員は企業と従業員双方から一通り主張を聞いた後、企業側に和解意思の有無を尋ねてきます。しかし、従業員の要求は金銭の支払いということが多く、さらにいえば、日系企業の労働争議の多くは、企業が法律どおりに処理していても起こっているのです。

 ここで、労働仲裁として受理されるべき争議内容について紹介したいと思います。一般的にはあまり知られていませんが、仲裁委員会の内部にて規定されているものです。
1、労働関係(雇用関係)のそのものが原因で発生した紛争
2、労働契約の締結、履行、変更、中止、解除、終了により発生した紛争
3、解雇、離職、異動により発生した紛争
4、労働時間、休憩休日、社会保険、福利厚生、研修及び労働保護により発生した紛争
5、労働報酬、労災治療費、経済補償金及び賠償金により発生した紛争
6、企業が従業員に対し経済処罰(罰金)などの懲戒を行う際、報酬に影響させたことにより発生した紛争
7、集団契約の履行に関する紛争
8、従業員の人事書類の移転により発生した紛争
9、従業員の社会保険移転に関する紛争
10、労働者から保証金、担保金などの財物を受領した際に発生した紛争
11、労働者の身分証明書、学歴証明書、学位証明書、資格証明書などの差し押さえにより発生した紛争

 このように労働局あるいは労働仲裁委員会内部では、労働争議に関する大枠のフレームが設けられています。企業としては、従業員に対して法律どおりの処理を行っていても従業員から労働仲裁を申請され、更に労働仲裁もそれを受理してしまうケースが多くなってきていることから、いつ従業員から訴えられるかわからない、そのようなリスクが年々高まってきていることは、企業は事実として捉えておくことが必要です。しかし翻って考えれば、企業は法律どおりに、それでいて法律以上の取扱いをすることは避け、粛々と対応すべき姿勢もまた大切です。(清原学)

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