海外赴任規程の整備と運用 第6回「海外赴任期間」

 今回は、海外赴任規程において規定しておいた方が望ましい海外赴任期間について解説をします。

 海外赴任期間の明示
 社員を海外に赴任させる際には、どれだけの期間、海外で勤務させるのかを計画立てておかなくてはなりません。海外赴任する者の立場からすると、どれだけの期間赴任するのかがわからないようでは、家族計画や住宅購入、キャリア形成などの人生設計が立てられず、非常に不安な状態となるからです。そのためには、海外赴任者の不安を解消するためにも、海外赴任規程や雇用契約書等において、「原則として○年」や「○年以内」といったようにその期間を明記しておくことが望まれます。

 3~5年の設定が一般的
 もっとも、海外拠点の事業がある程度安定しており、後任候補も十分にいるような場合は別として、現実的に海外拠点を立ち上げるといったような場合には、赴任者に事業が軌道に乗り安定化するまで現地にいてもらいたいと考えるのが企業の本音です。そのため、海外赴任期間は、明確な期間設定をすることができず、期間が曖昧な状態で赴任をさせてしまうことが少なくありません。特に後任の候補者がいない場合には、帰国させることもできず非常に長期に渡って赴任をさせてしまうことがあります。以上を考えると、労使間のトラブル防止の観点から、「○年~○年」といったように、幅を持たせた設定をするとよいでしょう。また、赴任期間の変更や延長をする可能性があるのであれば、その旨を明記するとともに、本人にも十分説明した上で、出向の同意書にその内容を盛り込んでおくこともあります。なお、赴任にあたっての具体的な年数としては、「3年~5年」という設定をされる企業が一般的には多いように感じます。この期間設定の背景としては、社会保障協定による相手国の年金制度加入免除期間が原則5年とされていることも一因ありますが、日本の生活環境からの長期の離脱は、赴任者本人や家族に与える影響が非常に大きく、その後の日本国内業務への復帰が難しくなるということも理由のひとつとして挙げられます。

 勤続年数への通算
 海外赴任期間の定めをする際には、併せて勤続年数への通算の取扱いについても定めておくことがよいでしょう(海外赴任期間は国内で勤務したと同様に勤続年数を通算するケースが一般的です)。海外赴任期間が勤続年数に含まれるのかどうかを定めておくことで、国内復帰した際に、年次有給休暇の付与や退職金の計算などの運用で混乱を生じることが少なくなるのではないかと思われます。

 海外赴任期間から見えてくる後任育成の重要性
 海外赴任にあたって、その期間が長期化してしまう一番の要因となっているのは、多くの企業担当者から耳にする限り「後任者がいない」ということのようです。海外拠点の事業が安定したとしても、自分に代わって対応する人材がいなければ、立ち上げ時の赴任者がいつまで経っても帰任できないという状況が続いてしまいます。そのため、ある程度事業の見通しが立った時点で、後任者の育成も考えていかなければなりません。また、現地のことについては日本から来た日本人よりも現地スタッフの方がはるかに状況等を熟知していることが少なくなく、現地スタッフのモチベーションの低下防止のためにも現地スタッフへの権限移譲も忘れてはなりません。(佐藤和之)

 当ブログの記事の無断転載を固く禁じます。