中国の出入国管理が強化されます(2013年7月1日~)

 昨年秋に中国各地で行われた反日デモ以降、PM2.5、鳥インフルエンザなど、チャイナリスクの問題は話題に事欠きません。これにより、日系企業の中国離れが心配されるところではありましたが、先日、日本経済新聞が日本の社長100人へ行ったアンケート結果では、その6割が「中国での事業展開に変更なし」と回答しており、依然として中国での事業意欲が高いことが伺えました。また、上海現地のコンサルタントに聴くところによると、上海の日本人学校の生徒数は増えているようで、上海の駐在員はむしろ以前より増加しているのではないかと思われるところです。

 そのような昨今、上海の日本国総領事館から駐在員に向けて、中国滞在時の注意喚起の書面が出されました。この注意喚起がされた背景には、「中華人民共和国出境入境管理法(以下、出入国管理法という)」の施行を目前に控えていることがあります。

 中国においては、昨年公布された「出入国管理法」が2013年7月1日より施行される予定であり、これに併せて、その実施細則といえる「中華人民共和国外国人入境出境管理条例(以下、管理条例という)」も施行される見込みです。この影響を受け、出入国の取扱いに多少の変更が生じるため、その動向については、確認をしておく必要があるでしょう(具体的なポイントは以下のとおりです)。

□中国滞在時の出入国関係注意点(上海日本国総領事館まとめ)
(1)不法滞在、不法就労
 ・不法滞在の場合は、罰金上限の引き上げ(5000元→1万元)
 ・不法就労仲介者、不法就労者の雇用者に対する罰則
(2)再入国禁止措置
 ・強制退去となった場合、最長で10年の中国再入国禁止となることが明文化
(3)外国人の出国禁止措置
 ・「出入国管理法」においても、外国人の出国禁止措置の規定あり
  (対象:刑事事件の被疑者・被告人等、未解決の民事事件のある者、労働者に対する賃金未払い者で裁判所や地方政府等が出国禁止を決定した者)
(4)査証(ビザ)
 ・新しい取扱いについては、今後公布される「管理条例」で詳しく規定される見込み
(5)居留許可(居留証件)と指紋採取
 ・今後、居留許可取得時には、指紋の採取をされることになる見込み
(6)臨時宿泊登記
 ・外国人は、中国で滞在する場合に臨時宿泊登記を行う必要あり
 ・違反した場合の罰金が引き上げ(500元→2000元)
 ・友人宅等に泊まる場合には、管轄の派出所にて臨時宿泊登記を自身でする必要あり
(7)パスポートの携行義務
 ・満16歳以上の外国人には、中国滞在中、旅券携行義務あり

 以上のとおり、今回の注意喚起の内容(全文は参考リンク先をご覧ください)は、普通に駐在をしていれば、まず問題にはならない事項であると思います。ただ、オーバーステイ(※)については、気を付けておかなければなりませんので、期間管理は十分に行う必要があるでしょう。(佐藤和之)

※オーバーステイ…ビザ等の在留期限が切れてもその更新手続をせずに滞在すること。不法滞在。

<参考リンク>
上海日本国総領事館「中国の新しい出入国管理法令の施行について(注意喚起)」
http://www.shanghai.cn.emb-japan.go.jp/life/new130621.html

当ブログの記事の無断転載を固く禁じます。