中国労務の最新事情~現場からの定点観測~第5回
■中国31省市における2013年8月のCPIランキング
中国では、ここ10年近く、従業員の昇給率は全国平均でも10%前後の高い水準を維持しています。企業が実施する昇給のうち物価上昇を考慮する、いわゆるベースアップについては、毎年発表される消費者物価指数(CPI)を参考に決定していることも少なくありません。先ごろ中国国家統計局により、全国31の省・市の2013年8月のCPIが発表されました。このうち18の省・市のCPIが全国レベルを上回っており、その中でも上昇幅は、西蔵(チベット自治区)が最高の4.4%に達していますが、遼寧省と黒竜江省の両省は1.4%という低い水準になっています。2006年から2007年にかけてはCPIが6%以上、7%近い高水準となり、中国政府もインフレに対する警戒感を抱かせていましたが、その後度重なる中国の金融政策が功を奏し、今では2000年前後の低水準にまで下がり、比較的安定した物価水準で推移しています。この統計を見る限り、中国中部から西側の地域のCPIが特に高い水準で表れているようです。もともと先行して経済発展が続いていた沿岸部はある程度消費が落ち着いてきているようですが、内陸地域については消費活動が活発に動いている表れかと思われます。
ところが昨年の統計で発表された2012年の各省・市の最低賃金の調整は平均で約21%の上昇となっています。また、各地方政府から発表される域内の昇給ガイドラインも標準で12~13%を指導され続けています。
このような動きを見てみると、中国政府は当面、絶対的な可処分所得を増やしていくという狙いがあるようです。物価上昇を抑えながら賃上げによる貨幣所得を増やし、その差額となる可処分所得を増加させていくことで、新たな投資や消費を促していくという政策を進めていきながら、過去からの課題であるGDPにおける個人消費の不均衡に対処することで、個人消費全体のボリュームを拡大させていくという方向に舵を切り始めていると言えるでしょう。(清原学)
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