中国労務の最新事情~現場からの定点観測~第7回

■中国 労働仲裁と仲裁員の苦悩 第2回

 翌日、総経理から連絡があり、周りの従業員に対するけじめもあるし、やはり解雇することにしたいということでした。労働仲裁になったときはまたその時に考えると。総経理がそのようなお考えになったので、私の方では今までの経緯を改めて確認し、就業規則も見せてもらいながら、「労働契約解除通知」を作成して、「本人にこれを交付するときに日付を入れてください。会話は録音しておいてください。話の持って行き方は…」等々、細かなところまで指南し、結果をまた教えてもらうことにしました。また、こういうことは仲裁になった場合を想定し、シナリオを作っていくので、会社からの要求はできるかぎり高いところに置いた方がよい、その方が仲裁になった場合、交渉しやすいということもお話し、従業員本人に対しては、経済補償金は支払わない、未就労時間分の給与の返還をせよという高いハードルを課すことにしました。

 それから数日後、本人と面談し、解除通知を渡したとの連絡が入りました。「どうでした?」という問いに、「通知を持って帰りました。サインはしていません。もしかするとその足で仲裁に行ったかも知れません。」とのこと。「では2、3日経ったら本人から“退職証明書”を発行してくれと連絡があるかも知れないので、解除通知にサインすることを条件としてください。サインしないうちは退職証明も出さないでください。」と伝えておいたところ、その翌日に本人から退職証明を出して欲しいという連絡があったようです。

~次回につづく~(清原学)

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