三中全会と一人っ子政策の緩和

 11月12日、中国では「三中全会」が閉幕しました。

※三中全会(中国共産党第十八回中央委員会第三次全体会議)
中国共産党中央委員会は同党全国代表大会(5年に1度開催)によって選出された委員により構成される党の最高指導機関のひとつ。全体会議では、党の重要人事に関する事項、重要な政策方針の決定などが行われる。「一中全会」では総書記など党の最高指導者の人事の決定が行われ、「二中全会」では国務院や全国政治協商会議の指導者の推薦名簿が議題に上がる。これら重要人事に関する討議が終わった後に開催されるのが「三中全会」であり、新指導部の包括的な政策方針が発表される。

 この三中全会においては、財政政策や景気浮揚に関する具体的提言には欠けましたが、35年間続いた「一人っ子政策」を緩和する政策方針が発表されました。
 中国の人口は2013年時点で13億4000万人。世界第二位のインドが12億2500万人です。中国では1978年から始まった「生育計画」や「生育条例」によって一人っ子政策が進められてきました。インドでは中国よりも早く、1952年から出産抑制政策が提案されていましたが、70年代にインディラ・ガンジー首相が出産抑制政策を強行し、国民の反感を買い、選挙で敗退。結局インドではこの出産抑制は実現しませんでした。一方の中国では、生育計画の効果により出生率は1963年に4.4%あったのが、2011年には1.2%までに減少。人口増加率も中国は0.48%と、インドの1.43%を大きく下回っています。このためインドは2025年に人口が13億に達し、2030年には中国の人口を上回ると言われています。
 このように一人っ子政策の結果、人口増加を抑制してきた中国ではありますが、すでに人口の10%が60歳以上の高齢者で、2030年には4分の1にまで高齢化が中共第十八届中央委员会第三次全体会進むとみられており、極度の少子高齢化により労働人口が減少していること、年金などの社会保障政策が発展していないため社会不安が拡大していること、農村民などは男子への期待が大きいため、男女の産み分けのための堕胎や小児の売買など人権が軽視され、欧米先進国からの一人っ子政策の解除に対する外圧が高まっていることなど、近年の社会問題にまで発展してきています。
 では、一人っ子政策を緩和することで人口増加にどの程度影響を与えるのか?私の予想では、沿岸の都市部ではさほど大きな影響はないと思います。そもそも都市部では、一人っ子の親同士の婚姻で生まれた子供は第2子まで出産が許されたりしていましたし、都市部では生活費も高く、子供の教育にも財力を要することや、両親が働いている家庭は日本以上に多いこと、子育てに関する社会のセーフティネットが整備されていないなど、多子生育については積極的ではない家庭も多いように思われます。ただ一方で農村部についてはこの緩和政策によって一定の人口増加への影響は与えるかも知れません。しかしそのためには単に人口を増やしていくというだけでなく、一方では社会保障政策の確立も同時に行えるような明確な展望がなければなりません。一人っ子政策の緩和が今後の中国の経済のみならず、豊かな社会の実現に与える影響を見守っていかなければなりません。(清原学)

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