今年は既に最悪の状況!PM2.5の原因は「質の悪い石炭」を使用する火力発電?

 昨冬に「PM2.5」というワードを初めて耳にした方も多いかと思います。私もその中のひとりです。

 中国では今年、10月1日の国慶節(建国記念日)前からすでにPM2.5による大気汚染状況が巷を騒がせ始めました。そもそも国慶節を迎える10月は、初秋の晴天、碧々とした北京の空の下に天安門がそびえ建っているイメージしか湧かないほど一年で一番快適な季節なのですが、今年の国慶節だけは、遠くにぼんやりと天安門の外壁が見えるくらい汚染された空気とともに迎える祝日となりました。

 とは言え、中国の大気が急に汚染されてしまったわけではなく、2000年前後からもともと空気は汚れていましたし、急激に発展してしまった経済状況では仕方ないものなのかなと思っていたわけです。我々中国に長くいる者からみても、これだけ環境保護が後手に回っている国の中では、当然に大気や水質汚染の環境問題が表面化するのは時間の問題という認識はありました。

 中国は資源大国で、158種類もの鉱物を有しており、埋蔵量をみれば世界第二位です。その中に、以前海外への輸出制限が加えられたレアアースも含まれています。そのうち埋蔵量が群を抜いているのが石炭。中国国内の主な産地は陝西省、山西省、内蒙古自治区など広範囲に渡っています。このあたりは石炭の産出権を持つ地元の有力者が多く、「石炭成金」と言われるほど一攫千金を果たした富裕層が集まっています。

 このように産出された石炭の用途は、もちろん国外へ輸出されるものもあるのですが、輸出相手国の基準に合わないもの、すなわち品質が悪いものに関しては国内で主に火力発電や集中暖房の燃料として使用されます。特に中国東北部である黒竜江省、吉林省、遼寧省、北京や天津などの華北地域等、中国北部では冬場になると町全体を覆う集中暖房の稼働が始まります。この燃料には国外へ輸出できなかった品質の粗悪な石炭が使われるわけですので、中国の北部の冬は空気が想像を絶するほど汚れてきます。ただ例年、大気汚染は集中暖房が始まる11月から翌年3月くらいまでの間に限られていたのですが、今年に限っては10月前に既に劣悪な状況になってきています。しかも肺がんや循環器系の疾患など、国民の健康被害も報道され始めており、現在よりも数年後の影響が懸念されるところです。

 企業もその対策に追われています。PM2.5に対する予防として効果が高いと言われる「N95」というマスクが既に中国国内では入手できなくなってきています。まだ収まるまでには当分時間も要することかと思いますので、駐在員の健康に与える影響、それ以前に帯同家族、特に小さなお子様を帯同されているご家庭については、一時帰国の措置を講じる赴任者が増えるのではないかと思われるところです。(清原学)

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