【海外勤務者の労務管理①】海外転勤を拒否された場合の対応(1)

 今回から複数回にわたって、海外勤務者の労務管理についてご紹介していきます。第1回目は『海外転勤を拒否された場合の対応』前編です。

【質問】
 従業員Aに海外転勤を命じたところ拒否されました。これまで国内転勤は経験してきたが、海外転勤があるとは聞いていないと主張しています。会社としてはAに代わる従業員はいないのですが、どのように対応すればよいでしょうか。

【回答】
 原則として、海外転勤の拒否は業務命令違反となります。ただし、家庭の事情など正当な理由があれば、拒否できる場合もあります。まずは拒否する理由を確認するとともに、トラブルを避けるためにも、就業規則に海外転勤についても明記することが重要です。

 そもそも転勤については、就業規則等において「従業員に対して、配置転換等の異動を命じることがある」という規定があり、実際に転勤を含めた人事異動が行われていれば、原則として拒否することはできません。それが海外転勤であっても同様の考え方がされます。しかし、従業員Aのように、転勤=国内のみと捉えられていることも少なくありません。こうした理由によるトラブルを避けるためにも、就業規則の異動や配置転換の条文に「海外も含む」といった記載を追加するとよいでしょう。

 ただし、いかなる場合でも転勤を強制することができるというわけではありません。家庭の事情などの正当な理由があれば配慮が必要となり、これを無視したまま転勤を強制すると、権利の濫用として転勤命令自体が無効となる可能性があります。
~次回につづく~(佐藤浩子)

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