海外赴任者の労災保険特別加入手続に潜む落とし穴(1)

海外赴任者が加入できる労災保険の特別加入制度とは
 社員が業務中にケガなどをした場合には、日本国内であれば、労働者災害補償保険(以下、「労災保険」)の適用があり、そこから治療費などの給付を受けることができます。ところが、海外の法人へ出向している社員の場合は、日本の法律である労災保険法の適用が及びません。そこで労災保険では、海外赴任者が特別に労災保険に加入し給付の適用を受けることができる「海外派遣者の特別加入制度」を設けています。

海外赴任時の加入手続に潜む落とし穴

 この海外赴任者を特別加入させるための手続は、「特別加入に関する変更届(会社で初めての赴任者である場合は「特別加入申請書」)」を管轄の都道府県労働局へ提出することによって行いますが、実はこの申請手続をいつ行うかというところに落とし穴が潜んでいるのです。

補償開始日は、特別加入の「加入日」から
 冒頭で触れたとおり、海外へ赴任をすると、海外赴任をした日(出向開始日等)から労災保険の補償対象者から外れてしまいます。そこで特別加入の手続を行うのですが、実際にその補償が開始されるのはいつからなのかということを意識しておかなければなりません。この補償が開始されるのは、申請書類に記載する「加入日」からです。
 この「加入日」については、申請書類を提出した日の翌日から14日以内の範囲で希望日を記入することができます。つまり、記入できる「加入日」は書類提出日の翌日以降ということですから、裏を返せば、赴任日から日を空けることなく補償対象としようとするのであれば、赴任前、事前に手続を行っておく必要があるのです。赴任後に書類を提出したのでは、どうしても補償の対象となっていない空白の日が生じてしまうことになるのです。

特別加入を遡ってすることはできない

 すでに赴任しているのにも関わらず、手続が遅れている状態で、何らかの事故が起こってしまえば、その事故は補償の対象外であるため、労災保険から給付を受けることができません。事故が発生してから、赴任日に遡って加入をするといったことはできず、「加入日」は、あくまで労働局に申請を提出した日の翌日以降の日付となります。
 社会保険関係の手続は、対象となる事由が発生した後に手続をするものが大多数であり、赴任前に事前の手続が基本となるこの手続は、社会保険の手続の中では珍しいものです。そのため、手続遅れが生じやすいものですから、手続担当者はこの点を気に留めておかれるとよいでしょう。(佐藤和之)

<参考リンク>
厚生労働省「特別加入制度のしおり(海外派遣者用)」
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/040324-7.html

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