海外関係の労働判例(国・中央労基署長<旧旭硝子ビルウォール>事件)~海外出張者の帰国後の自殺~

こんにちは。服部@名南経営です。
 企業の海外進出が当たり前のようになってきている現在、海外関係の人事労務トラブルも同時に増えているように感じます。そこで、今回は、海外関係の労働判例をご紹介します。

国・中央労基署長<旧旭硝子ビルウォール>事件(東京地裁・平成27年3月23日判決)
香港のディズニーランドの建物や乗り物の一部を請負い、長期出張。
出張としてホテル暮らしをしながらも、1ヵ月あたり100時間を超える残業が重なり、度重なる仕様変更や苦情対応に追われた。
帰国後、7ヵ月半経過後に自殺。
遺族が労災申請をしたところ不支給処分を受け、国に対して取消しを求めて提訴。

hk2 こんな概要ですが、裁判所は帰国後7ヵ月半経過したことは、「発症前6ヵ月という認定基準」からは逸脱するものの帰国後に香港プロジェクトが大幅赤字となったことが明らか、かつその時期に前後して活動性が減退したこと、等から帰国後も断続的に心理的負荷が続いていたとして業務起因性を認めました。

 判決文では、このプロジェクトで9000万の赤字となったと書かれており、会社にとっては人材を失ってしまったこともあり、私が言うのもなんですが、受託をしなければよかった案件であったように思います。

 今回のケースは、海外出張であったから労災認定となりましたが、海外出向であれば、そもそも現地の法律によって考えられていきますので、ホテル暮らしの出張ということが遺族にとっては不幸中の幸いであったのかもしれません。

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