中国人事管理の先を読む! 第1回「インフレ経済下における賃金管理」

 中国では2006年の下期よりCPI(消費者物価指数)が上昇を続け、4%を超えた現在もさらに上昇の兆しを見せています。123日、インフレ、物価上昇を抑制するため、中国政治局会議にて金融政策の引き締めが決定され、中国人民銀行は引き続き、追加の利上げを行うと見られています。このようなマクロ経済状況下において賃金管理を疎かにしますと、昇給を実行しても物価水準の上昇と比較して実質減給となり、社歴の長い従業員よりも直近で入社した従業員の給与の方が高いという現象も発生し、従業員の満足を得るのが難しくなります。つまり、現在の中国経済下では「ベースアップ」が必然の対応となります。

 日本では2000年に入ってからはデフレ基調の経済環境のため、ベアを実施している企業は極めて少なくなりました。私は5年前から各地の講演で「中国の賃金管理はベアを避けて通れない」とお話して参りましたが、日系企業はベアに慣れておらず(本社の同意が得られず)、人件費もまだ低い水準で推移していたため、理解いただくのが難しい状況でした。しかし今はベアの必然性を疑う方はいらっしゃらないと思います。

 実際にベアを実施する場合には、留意すべきことがふたつあります。ひとつは賃金テーブルの書き換えです。北京、上海、江蘇省など、各行政区が毎年発表しているCPIが指標となります。このCPIを参考に「定率」で行うか「定額」で行うかを決めなければなりません。「定率」で行う場合、ベアの効果は賃金水準の低い従業員に厚く、賃金水準の高い従業員に薄くなります。「定額」で行う場合はその逆の効果が得られます。「定率」と「定額」の両方を使って書き換えを行う場合もあります。賃金テーブルは規則性を持ち、全体で均衡がとれている状態ですので、迂闊に書き換えてこの規則性を崩さないよう注意することが必要です。

 また、ベアを実施しただけでは従業員間のそれぞれのプロット位置には何の変化もありません。ベアを実施した状態で、個々の評価による「昇給」を実施します。つまり「ベアが先、昇給が後」ということです。賃金テーブルの書き換えを行った後、社員個々の評価による昇給を実施しますが、全体の平均昇給率に対し、ベアと昇給の各々比率をどの程度予算として見ておくか、賃金管理上重要なポイントとなってきます。

 多くの日系企業では賃金決定プロセスの整備が遅れている傾向にありますが、合理的で納得性の高い賃金管理を行うことで、企業が直面する労務リスクの軽減にもつながりますので、早急にこのような賃金決定の制度を作られることをお勧めします。(清原学)

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