労働契約を締結する際に記載すべき事項は?
A 労働基準法において、明示事項が定められています。
1.全体的明示事項
労働契約とは、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がその労働に対して賃金を支払うことを内容とする契約であり、それぞれ労働者と個別に締結します。
労働契約を締結する際には労働条件が曖昧であることによるトラブルを防ぐために、以下の絶対的明示事項といわれる必ず明示しなければならない項目が定められています。
●絶対的明示事項(労働基準法施行規則第5条第1項)
一)労働契約の期間に関する事項
一の二)期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項
一の三)就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
二)始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
三)賃金(退職手当及び第五号に規定する賃金を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
四)退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
2.相対的明示事項
また、以下は、相対的明示事項といわれ、制度を設ける場合に明示しなければならない事項です。なお、相対的明示事項は口頭での明示でも構いません。
●相対的明示事項(労働基準法施行規則第5条第1項)
四の二)退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
五)臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及び第八条各号に掲げる賃金並びに最低賃金額に関する事項
六)労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
七)安全及び衛生に関する事項
八)職業訓練に関する事項
九)災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
十)表彰及び制裁に関する事項
十一)休職に関する事項
これらはあくまで最低限の項目にすぎないので、労働契約を締結する際は、トラブルを防止するためにもできるだけ具体的に、特に就業規則等で示している内容で重要と思われる事項については、個別の労働契約にて労働者に明示することが望ましいといえます。
また、相対的明示事項については、口頭でも明示が可能ですが、万一トラブルが発生したときを想定して、契約内容の証明となるように書面で残すとよいでしょう。
一方で、労働者も、明示された契約内容については、当然、守らなければならにものになりますので、契約に合意する際は、内容をよく確認するようにしましょう。
(野村悠太)