社会保険に加入したパートタイマーの定時決定はどのように行われるのでしょうか?

A 基本的には正社員の定時決定の方法と同様ですが、標準報酬月額を算定する支払基礎日数の取り扱いが異なります。

1.短時間就労者と短時間労働者
 パートタイマーの場合、労働時間が正社員と比べて少なかったり、配偶者などの扶養に入られている方も多いため、健康保険・厚生年金保険(以下、「社会保険」という)に加入していないというケースが方が少なくありません。ただし、パートタイマーであっても、一定の要件を満たす場合には社会保険に加入する必要があります。

 その一定の要件とは、原則として1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が、通常の労働者と比較して4分の3以上であることとされています。具体的には、所定労働時間が8時間、所定労働日数が20日(週5日)の事業所で働くパートタイマーであれば、「1週間に30時間以上かつ1ヶ月の所定労働日数がおおよそ15日以上」のパートタイマーは社会保険の加入が必要となります。この4分の3基準で社会保険に該当するパートタイマーは「短時間就労者」と呼ばれます。なお、厚生年金保険の被保険者の総数が常時501人(2022年10月からは101人、2024年10月からは51人)以上の事業所では、上記の4分の3の要件を満たしていなくとも以下の要件を満たすことで社会保険の加入が必要になります。これらのパートタイマーは「短時間労働者」と呼ばれます。

  1. 週の所定労働時間が20時間以上あること
  2. 雇用期間が1年以上見込まれること
  3. 賃金の月額が8.8万円以上であること
  4. 学生でないこと
  5. 特定適用事業所または国・地方公共団体に属する事業所に勤めていること

2.パートタイマーの定時決定
 短時間就労者と短時間労働者は社会保険に加入することになり、正社員同様、毎年4月、5月、6月の3ヶ月間に支払われた賃金を基に定時決定を行います。短時間就労者および短時間労働者の定時決定は、基本的には通常の正社員(短時間就労者および短時間労働者以外の方)と同様に行いますが、標準報酬月額を算定する支払基礎日数の取り扱いに関しては正社員と異なります。

 正社員であれば、4月、5月、6月の3ヶ月間の支払基礎日数が17日以上の場合、各月の報酬総額の平均を報酬月額として標準報酬月額を決定します。ただし、17日未満の月がある場合は、17日以上の月のみの報酬総額の平均を報酬月額として標準報酬月額を決定します。また、3ヶ月とも支払基礎日数が17日未満の場合は、従前の標準報酬月額にて引き続き定時決定します。一方で、短時間就労者の場合は、支払基礎日数が17日以上の月がある場合は、正社員と同様に標準報酬月額を決定しますが、3ヶ月間のうち支払基礎日数がいずれも17日未満の場合は、3カ月のうち支払基礎日数が15日以上17日未満の月の報酬総額の平均を報酬月額として標準報酬月額を決定します。さらに、短時間労働者の定時決定は4月、5月、6月のいずれも支払基礎日数が11日以上の場合に標準報酬月額を決定することになります。その際11日未満の月がある場合は、11日以上の月のみの報酬総額の平均を報酬月額として標準報酬月額を決定します。

 これをまとめると以下のようになります。少し複雑ですので間違えないよう注意が必要です。
<正社員>
(1)4月、5月、6月の3ヶ月間のうち支払基礎日数が17日以上の月が1カ月以上ある場合
 該当月の報酬総額の平均を報酬月額として標準報酬月額を決定します。
(2)4月、5月、6月の3ヶ月間のうち支払基礎日数がいずれも17日未満の場合
 従前の標準報酬月額にて引き続き定時決定します。

<短時間就労者>
(1)4月、5月、6月の3ヶ月間のうち支払基礎日数が17日以上の月が1カ月以上ある場合
 該当月の報酬総額の平均を報酬月額として標準報酬月額を決定します。
(2)4月、5月、6月の3ヶ月間のうち支払基礎日数がいずれも17日未満の場合
 3カ月のうち支払基礎日数が15日以上17日未満の月の報酬総額の平均を報酬月額として標準報酬月額を決定します。
(3)4月、5月、6月の3ヶ月間のうち支払基礎日数がいずれも15日未満の場合
 従前の標準報酬月額にて引き続き定時決定します。

<短時間労働者>
 短時間労働者の定時決定は4月、5月、6月のいずれも支払基礎日数が11日以上で算定することとなります。


参考リンク
日本年金機構「定時決定(算定基礎届)」
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20121017.html

(野村悠太)