男性の育児休業取得促進に向けた雇用保険育児休業給付見直しの方向性

 男性の育児休業取得促進の検討が進められる中、労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会では、昨日(2021年1月27日)、男性の育児休業取得促進等に係る育児休業給付制度等の見直しの方向性を以下の通り、まとめました。

 育児休業給付制度等については、育児・介護休業法の改正に対応して、以下(1)から(3)までのような見直しを行うことが必要である。また、育児休業給付の支給の前提となる、休業前2年間に12 か月以上の被保険者期間要件について、対象者の出産日によって不合理な取扱いが生ずることのないよう、以下(4)のような見直しを行うことが必要である。
(1)出生後8週間における新制度に対応する新たな給付の創設
 子の出生直後の休業の取得を促進する枠組みに対応する育児休業給付育児・介護休業法の改正による、子の出生直後の時期の現行制度より柔軟で取得しやすい新たな仕組み(以下「新制度」という。)の創設に対応して、育児休業給付についても、その一類型として、従来の制度的枠組みに基づく給付(育児休業給付金)とは別に、子の出生後8週間以内に4週間までの期間を定めて取得する休業に対して支給する新たな給付金(以下「新給付金」という。)を創設する。その際、新給付金については、
・2回まで分割して新制度に基づく育児休業を取得した場合にも、新給付金を受給できる、
新制度において、一時的・臨時的な就労に加えて休業前に調整した上で就労することが可能となることを踏まえ、休業中の就労の取扱いを、最大で10 日(これを超える場合は 80 時間)の範囲内とし、賃金と給付の合計額が休業前賃金の80%を超える場合には、当該超える部分について給付を減額する仕組みとする
・給付率やその他の制度設計については、現行の育児休業給付金と同等とし、また、67%の給付率が適用される期間(6か月間)の取扱いについては、新給付金と育児休業給付金の期間を通算する
こととする。なお、支給手続は、煩雑にならないよう、子の出生後8週経過以後に1度の手続により行うこととする。

(2)育児休業の分割取得等
 育児・介護休業法の改正により育児休業を分割して2回取得することができるようになることに対応して、育児休業給付についても、同一の子に係る2回の育児休業まで支給することとする。また、事務負担を軽減する観点から、(1)の新制度に基づく育児休業も含め、複数回育児休業を取得した場合、被保険者期間要件の判定や、休業前賃金の算定については、初回の育児休業の際に行うこととする。

 また、育児・介護休業法の改正により1歳以降の延長の場合の育児休業の開始日を柔軟化し、1歳~1歳半、1歳半~2歳の各期間の途中でも夫婦交代できるようになることや、第2子以降の子の産休により育児休業が終了し、死産となった場合等の特別な事情があるときの再取得が可能となることに対応して、育児休業給付についても、こうした場合には、例外的に3回目以降の育児休業でも支給することとする。

(3)有期雇用労働者の育児・介護休業促進
 育児・介護休業法の改正により有期雇用労働者の育児休業・介護休業に係る「引き続き雇用された期間が1年以上」の要件について、無期雇用労働者と同様の取扱いとなるところ、育児休業給付・介護休業給付についても、同様の対応とする。

(4)みなし被保険者期間の算定方法の見直し
 現行制度は、育児休業開始日を離職した日とみなして支給の前提となる被保険者期間を算定しているが、育児休業給付は、育児休業による所得の喪失を保険事故としていることから、この原則は維持した上で、出産日のタイミングによって、この方法によっては被保険者期間要件を満たさないケースに限り、例外的に産前休業開始日等を起算点とする。

 中でも(1)の新給付の中の上記アンダーライン部分は大きな改正となり、男性の育児休業取得のインセンティブとなるのではないかと思われます。

 厚生労働省としては、この報告書の内容を踏まえ、現在開幕中の通常国会への法案提出を行う予定となっています。今後の法律案、そして国会での審議をチェックしていきましょう。


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2021年1月19日「厚労省「男性の育児休業取得促進策等について」を公表 育児・介護休業法改正案の策定へ」
https://roumu.com/archives/105840.html

参考リンク
厚生労働省「労働政策審議会 職業安定分科会 雇用保険部会報告」
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000107715_00002.html?fbclid=IwAR0HypdUIdzdpijkq88RHOztgOjjW4Vp3YUAyIZ91ycUs87wkhnsNXy_X2c

(大津章敬)